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幸せ

「結局、璃々子は向こうで安楽死を選んだ。だから、もうこの世にはいないよ。ここにある遺骨は少しだけ贈ってもらったやつなんだ。」 「箸とか、皿は、2人で暮らしていた頃のものをまだ使ってる。だから、全部2個ずつ。でも、普通は元嫁が使ってたやつは嫌だよな」 そう言って晴さんは苦笑する。 俺はその姿がとても寂しそうにみえて、抱きしめた。 なんて声をかければいいのか分からなかったから、何も言えなかったけれど、晴さんは俺を抱きしめ返して小さく「ありがとう」と呟いた。 *** 夜、2人でベッドに寝転ぶ。 「晴さん」 「ん?」 「璃々子さんは、幸せだったかな」 「どうかな…日本にいるときは沈んでいたけど、アメリカに戻って、自分がやりたいことをやったって最後に送られてきた手紙に書いてあった。」 「そっか、なら良かったね」 ああ、まあ、と思い出したように晴さんが付け足す。 「彼氏も出来てたからな」 ぱちくりと目を丸くする。 「彼氏?」 「ああ、『私はこんなに素敵な人を捕まえたから、晴もいい人見つけて、大事にしてね』って書いてあった。写真もついてたけど、幸せそうにみえたよ」 「だから、優、俺は璃々子がすきだけど、もう恋愛感情じゃないんだ。昇華されてる、みたいな感覚っていえば1番近いと思う。」 「いま、恋愛感情で好きなのは優だけだ。嫉妬も、愛しいっていう気持ちも、全部優にだけ。」 抱き寄せられて、その流れのまま俺は晴さんの胸に頭を寄せる。とくとくと早めに動いている心臓に、科白に、自然と笑みが浮かんだ。 「晴さん、俺、幸せ」 そのあと、明日はどうしようか、皿を買いに行こう、2人分の新しい箸も買おうね、と、まだ見ぬ幸せを話し合い、抱きしめあって眠った。 静かで、でもたしかに暖かい、そんななんでもないような日々が1番幸せだな、と感じながら。

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