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お姫様抱っこ
こういうところに来るのは初めてではないが、やはり男同士で入るとなるとなんとなくそわそわしてしまう。
けれど晴さんは何も気にせずに俺の手首を掴んで選んだ部屋へと向かっていく。
扉がしまった瞬間、唇が塞がれた。
「んっ…ふ、あ…は、るさ…おふろ…」
このまま愛されたかったけれど、1日仕事をして汗をかいている。ちょっと臭いとか気になる初夏なので、晴さんの胸を押して少し唇が離れる隙に訴える。
名残惜しそうに俺の上唇を甘噛みし、俺をひょいと抱き上げた。
いわゆるお姫様抱っこ、というものだ。いつか誰かしてくれないだろうか、と夢見たこともあったけれど、現実的に難しいだろうと思い諦めていたものだった。
けれど、そんなことを思い出すよりも、両足が空中に浮いていることへの不安や恐怖が強く、慌てて晴さんの首に腕を回してぎゅうっと抱きつく。
「優、顔上げて」
くす、と笑った晴さんが俺にそう促してきたので、恐る恐る顔を上げると、晴さんがくるくると回転した。
「うわあああ」
最初は奇声を発して怖がっていたものの、段々と楽しくなってきてけらけらと笑い声をあげた。
風呂場について、すとんと下ろされても、俺はまだ楽しくて笑っていた。
晴さんがスーツを丁寧に脱がしてハンガーに掛けてくれる。
「俺ね、お姫様抱っこしてもらうの憧れだったんだあ。ありがと、晴さん」
そういってちゅっとキスすると、すぐに噛みつかれるようにして唇を貪られる。そのまま耳へと晴さんの唇が滑り、はむはむと耳を食べられた。
思わず声を漏らす。
「優が望むなら、なぁんでもしてあげるよ」
ハートがつきそうなほど甘い声で囁かれて、ぞくぞくと甘美な痺れが背筋を通った。
そんな俺の腰を抱き抱え、キスをしながら晴さんも自身の服を脱いでいく。
だんだん顕になる、程よく筋肉のついた引き締まった身体に、吸い寄せられるように触れた。
鎖骨の上あたりにちゅっと吸い付くと、真っ白で綺麗だった晴さんの身体に紅い華が咲いた。
馴染ませるようにぺろぺろと舌で舐めていると、溜息が聞こえ、ちらりと見上げると顔を真っ赤にした晴さんがいた。
「晴さん可愛い、」
そういって頬に口付けると、早急に風呂場へと連れて行かれ、もつれ合うように風呂場へと入った。
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