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食事
「晴さぁん……これは、恥ずかしいんだけど…?」
起きて暫く2人でごろごろとしていたけれど、お腹すいたねって話になった。すると、バスローブのようなものを着させられてリビングに連れていかれた。
晴さんがちゃちゃっと作ってくれたのは、お茶漬けだった。お茶漬けといっても、俺のような庶民が食べる、あのお湯をかけて簡単に作れるものじゃなくて、高級そうな梅干しを叩いて、しらすとともにご飯にちょこんと盛り付け、ぬるめの緑茶を注いだもので、半端なく美味しい。
そう、美味しいのだけれど。
俺の状況が、満足に味わえない原因になっている。
「俺が無理させちゃったから、手伝いたいんだけど……駄目?」
そういって捨てられた子犬のような可愛らしい瞳で見つめられると、何も言えなくなる。頭の隅で「さっきまで悪魔だった男だよ!」と小さい俺が叫んでいるけれど、もう俺には聞こえない。
はい、と木のスプーンに程よく盛られたお茶漬けを向けられる。俺を後ろから抱き抱えるようにして座っている晴さんはとってもご機嫌だ。
もう俺は何も言わずに口を開け、ほろほろと口の中で解けていくお米と、梅の程よい酸味を噛み締める。
美味しすぎるし、晴さんが甘やかしまくってくれるから頭から抜けてしまいがちだけれど、俺ばかり恥ずかしい思いをするのは違う、と思った。
俺だって晴さんになにかしてやりたい。そして、決意する。
「スプーンとお茶碗貸して?」
俺が自分で食べようとしてると思ったのか、少し渋った晴さんだったけれど、俺がお願いと念押しすると諦めたように渡してきた。
いそいそとスプーンの上で最高のお茶漬けを作るために格闘する。しらすも梅も丁度いいバランスでのっていた。
「はいっ、晴さん、あーん」
すると、ぱちぱちと瞬きを繰り返してスプーンと俺の顔を見比べる。じいっと見つめられ、どうしたんだろう、と考えながら微笑みかけた。
ゆっくりと晴さんの口が開いたのをみて中にスプーンをいれる。咥えたのを確認してから、そっと抜いて、じいっと見つめてみた。
ゆっくり、味わうように噛み締めた晴さんの喉仏が、嚥下に合わせて上下に動く。ぺろり、覗かせた赤い舌が、綺麗な形の唇をそっと舐めとって、微笑んだ。
「美味しい」
あまりにもエロすぎて、目眩がするかと思った。俺が膝の上で色々動いたせいで、晴さんの着ているバスローブも少しはだけていて、くっきりと浮かび上がった鎖骨もエロい。
まえ、なにかの漫画で「食事をする姿にさえ興奮する」といっていた人の気持ちが、今ようやくわかった気がした。
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