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晴さんが連れてきてくれたのは、有名チェーンのステーキ屋だった。サラダバーとかドリンクバーとかがあって、俺も大学時代ちょっとしたご褒美にたまに来ていた店だ。 たぶん、晴さんなりに倖が気負わずにたくさん食べられるようなところを選んでくれたんだと思う。 俺と晴さんが隣に座って、向かいに倖が座った。 俺たちはヒレを、倖はミックスグリルというすごいグラム数のものを頼んでいた。 サラダバーとドリンクバーも頼んで、倖が嬉嬉として皿とコップを持っていく。 「優、俺たちも行こうか」 「うん。晴さん、本当にありがとう」 そういうと、微笑んで頭をくしゃりと撫でられた。 「優の家族なら、これから長く付き合っていくことになると思うし。本当はかっこつけたかったからもっといいところに連れていこうかと思ったんだけどね」 そう言って茶化すように笑いかけられ、思わず俺も笑い返す。 やっぱり俺、晴さんがすきだなぁ。 そうしみじみと思った。 サラダバーでは、いろいろな種類の野菜やドレッシングがあって、俺はお気に入りの明太子ドレッシングを掛けた。 梅ドレッシングもあったので、晴さんはこれかなぁ、と思いながら見ていると、梅ドレッシングを見つけた瞬間ぱぁぁ、と花が咲いたかのように嬉しそうな笑みを浮かべ、鼻歌まじりに掛けて、更にはドレッシングの横に置いてあった壺の中から小さな梅干しを3個お皿に乗せて嬉しそうにしていた。 俺は思わず、こんなに可愛い26歳がいるのか、と身悶えてしまった。 俺たちが戻る頃には、倖はとっくに食べ始めていて、そんな俺たちを見られてなくてよかった、と息をついたのもつかの間。 「すげぇね、優兄たち。外でもイチャイチャするんだな。あそこのテレビで丸見えだったよ」 そういわれてばっと倖が指さした方を振り向くと、丁度鉄板の上でお肉が焼かれている映像がぱっと切り替わってサラダバーを取る人達の映像が流れ出した。 「もしかして、ずっと…?」 恐る恐る問いかけると、当然、といった感じで頷かれて、俺は何も言えなくなってしまって、赤くなった顔を誤魔化すように大きな口でレタスを頬張った。

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