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写真

父さんと母さん、俺と柚兄さんが並びあってテーブルに座る。倖は、俺と母さんの間の椅子に座った。 これが、俺たちのいつもの座り方だった。 全員がどことなくそわそわしつつ、周囲の様子を伺う。 「あのね、兄さん」 そう呼びかけて、隣に座る柚兄さんの方へ身体を向き直した。 「ん?」 「俺たち、本当の兄弟なんだ。伊原家は、3兄弟だよ」 兄さんの目が驚きで見開かれる。 「…え?いや、でも、俺は、俺たちは、2人…3人?あれ、え?」 混乱しているようだったので、落ち着くまで少し待ってから、再び口を開いた。 「ねぇ、兄さん。一緒にアルバムを見よう?」 兄さんはまだ混乱していたけれど、俺がじっと見つめると、なにかを覚悟したように強く頷いた。 俺が出ていくときに一緒に持っていったアルバムを鞄から取り出す。 それを、兄さんに手渡すと、そっと机に置いてから、ゆっくりと表紙をめくった。 まず、最初に現れたのは病院特有の青い服を着た、若い両親と、小さな赤ちゃん。これは、柚兄さんだ。 そこから数ページ、捲った先にあったのは、大きなお腹に耳を当てて真剣な表情をしている、柚兄さん。母さんの丁寧な字で〝柚ももうすぐお兄ちゃん。楽しみだね〟と書かれていた。 ゆるりと頬を緩ませた兄さんが、少し頭を抑える。それは、そうだろう。もし、このお腹にいるのが倖ならば、柚兄さんは4歳だから、もっと大きい。けれど、写真に写っているのは明らかに小さな男の子だったから。 兄さんがそっと、震える手でページをめくる。 そこに居たのは、白い服に身を包んだ赤子と、手を握られて嬉しそうに笑う男の子。 病室で取られたその写真には、〝伊原 優くん 誕生おめでとう〟というカードが貼られた小さなベッドも写っていて。 ばらばらと大きな音を立てて次々と捲られるアルバム。少しずつ成長していく俺たちに、途中から倖が加わって、3人で撮った七五三の写真で兄さんの手が止まった。 緑の着物を着た3人の男の子たちがまあるく座り笑いあっていて、それを少し上から取られたものだった。 「一一懐かしい写真ね。いまでも、すごく覚えてる」 そっと震える声でそういった母さんをみつめる。 「柚は緑、優は黄色、倖は青。みんな好きな色はばらばらだったのに、このときは優が『柚兄とおそろいがいい!』っていって聞かなくてね。で、それを聞いた倖が『僕も!』って。だから、これはみんな緑色の衣装なのよ。ほんとに、懐かしい…」 そういって母さんは目頭を覆った。そっと父さんが母さんの肩を抱き寄せる。 「柚、俺たちが隠していて、本当にすまなかった。優も、柚のことで手一杯になってしまって、追い出すような形になってしまったことは本当に後悔している。申し訳ない」 声を出したら、また涙が出そうで、俺はただただ首を振るしか出来なかった。 俺は、ちゃんと家族に愛されている。そう思えた。

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