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、
「そんなに畏まらないでください」
そういってにこやかに笑みを浮かべる晴さん。
「今日は朝いったように1人ずつ面談して頂くから、失礼のないようにな」
部長の台詞に、飛び上がる。
ええっ、そんなの聞いてない!!
そう思って周囲を見渡すと、全員が目を白黒させていた。
…どうやら、誰にもなにも説明していなかったらしい。
さっそく部長と共にミーティング室に入っていく晴さん。
ぱたんとその扉が閉まると同時に全員が息を吐き出した。一気にザワザワとし始める。俺のところにも侑がやってきた。
「侑…お前知ってたならいってよ」
「いやいや、俺も神田さんが来んのは知ってたけど面談なんてしらなかったっつーの」
2人で顔を見合わせて、はぁっとため息をついた。
まぁ部長の適当さは今に始まったことじゃないし、許せないけど仕方ないと思う。
けれど晴さんは違う。恋人の俺にサプライズをしてくれたんだとしても、こういう形のサプライズはいらない。
「…でも、だから晴さんご機嫌だったのかぁ」
「…なに?神田さんご機嫌なの?愛されてんなぁ、優くんは」
茶化すようにまたニヤつきながらそう言ってくる侑はやっぱり鬱陶しかったので、今回はきちんと頭を叩いておいた。
10分ほどして、再びミーティング室の扉が開く。そこからはどんどんと上司たちが呼ばれていって、出てくるの繰り返しだった。
しかし、俺にはきこえてしまった。
女性の方々の声が。
「社長ってあんま顔見たことなかったけど、めっちゃイケメンだったぁ」
「わかる!あの顔で『なにか困ったことはない?』って優しく聞かれちゃって、思わず恋の相談するところだった!」
あはははは、と笑い声が響いた。
段々とイライラしてきて、眉間に皺を寄せる。
晴さんがかっこいいのなんて俺のが知ってるし。
晴さんには俺っていう恋人がいるんですけど。
どこにもやり場のない怒りを仕事にぶつけ、黙々と凄まじいスピードで仕事を片付けていたら、いつの間にか俺の番になっていた。
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かなり下請なのに代表取締役は来るのか?と疑問に思ったため、22話で公開した優の勤め先を 変更致しました。
変更前 →〝株式会社 K〟
変更後 →〝KHホールディングス 〇〇支社〟
また、内容につきましては変更しておりませんので、読み返さなくても影響はございません。
よろしくお願い致します。
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