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ご飯

ドアをノックしたのは、『Blak'n Blue』の店長の中川だった。 「あんた、さあ。うちの店辞めちゃて翔ちゃんにただでヤらせるなんて勿体ない」 俺を見るや否や中川店長はそう言い放った。店長は微妙にオネエ言葉風味で可笑しい感じがした。 だけど、俺はそんな事はどうでもよくて、目の前のごはんを食べるのに全集中していた。 俺が死にそうに腹が減っているのを見た店長が「今、なんにも材料がないのよ」 とか言いながらも、すぐあったものでいろいろ料理を作ってくれた。白いごはんがいいと言ったらご飯も沢山でてきた。しかもおいしいし。 2人は、俺が夢中で食べている脇で色々話し始めた。 「翔ちゃんって言うのやめてくれない?」 「いいじゃない。他人のふりしなくったってね。もう雅ちゃんは、うちの店の子じゃないし。今は翔ちゃんの家に来たお客さんでしょ?」 俺はとりあえず、一息ついてほっとしていた。落ち着いて2人の会話を聞いていると次々と色んな疑問が生まれて来た。 何故木戸の事を"翔ちゃん"って言っているんだろう? 他人のふりしなくてもいいってどういうことなんだろう? それに、…なんで、店長がここでご飯を作っているんだろう? あれ? 「店長?何でここに居るんですか?」 店長と木戸は顔を見合わせて笑った。 「あんた、さんざ食べて今頃言うなんて。変な子」 店長が呆れたように言った。 お腹いっぱいになったら、余裕が出てきて色々考えられるようになったんじゃん……。 でも、遅すぎかもだけど……。 「だって、翔ちゃんと一緒に住んでるんだもの」 一緒に住んでる?ってそれって? 「え?どういうこと?」 一緒に住んでいる。ってことはルームメイト?……ではなさそう。オネエぎみの店長と男好きな変態男の2人が一緒にっていう事は……? いきつく答えは…… 「え?それって2人がデキてるってやつ?」 思わず声に出してしまった。言ってしまってやばって感じになった。少し前までこういう発想自体しなかったのに……。色々毒されているとしか。 2人は顔を見合わせて笑った。 「違う違う~。私の姉さんの子が翔ちゃんなの」 「中川店長は、俺の叔父さんなんだよ」 木戸が続けて言った。 「それにね、翔ちゃんと私はね。全然違うの。タイプ違うから、私は基本これでも女好きだし」 何故それでオネエ言葉なんだ?もう、頭に「?」がいっぱいですけど。 「俺は、雅ちゃんみたいな子が好きなんだよ」 やっぱりよくわからないし。もう、いいや・・・。 「あはは、雅ちゃん混乱してる」 「もう考えるのやめます。とりあえず。店長の作ったご飯。おいしかったです」 「嬉しい。ありがと」 店長はにこにこして俺に抱きつく。だけど、木戸がものすごく睨んでいた。

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