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サンセット
………
……
…
「雅ちゃん」
……起きて…と言われて、目を開いた。
「……翔平?」
……目の前に、翔平の顔があった。
「見て」
翔平が指さす窓をみると……。
目に飛び込んで来たのは、一面のオレンジ色。
それと、深い青の色と、それが、グラデーションになって空の雲を染めて、海にキラキラ映っていた。
そして、足元には、すでに暗くなった街の光りが煌めいていた。
「これは、この時間しか見れないよ。もう少ししたら、すぐ暗くなってただの夜景だけになっちゃうから」
沈みかけの太陽のそばには雲がなく、まだ少し明るい。
「すごい、絵みたいだ」
「ね、東京の海ってこうやって見ると、綺麗でしょ?これ見せたかったんだよ」
たしかにすごい綺麗で現実の世界じゃないみたい。こういうのなんていうの?逢魔が時?いやサンセットなんとか?
上のほうで見なければこんな感じには見れないと思う。下の街の光との対比がとても幻想的に見える。
俺がおおーっと思いながら見ていると、気が付くとものすごく、翔平がニコニコしていた。
「……あ・・・」
そういえば、俺……あのまま気を失ってたんだよ。つか、
「ここ、ヘリコプターの中だし」
「そうだよ?何言ってるの?」
「貸切だからって、何すんだよ?」
「だって、結構、嬉しそうだったよ?」
「それはそうだけどさ……」
「ああ、もう時間だね。ホントはもっとゆっくりしたいんだけど今日はそうも行かないんだ。ごめん」
「だけど…ヘリコプターのチャーターとかって、そういうのって、なんかの記念日とか誕生日とか、クリスマスに、するもんじゃないの?」
「そういう時にしたら、アタリマエすぎてつまらないでしょ。だから。ホントの雅ちゃんの誕生日にはもっとすごい事するからね」
……だからね?
そう言って翔平は俺を抱きしめた。
これがアタリマエ……なのか?…すごい事ってなんかものすごく怖いんだけど?
俺は顔が引きつりそうだった。
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