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今度こそ
「俺が会社を立ち上げたばかりの頃、倉沢を迎え入れたかったんだけど、なかなか連絡がつかなくて、逆に彼がこちらにアプローチをかけてきたときには、俺が、忙しくなってきて会う事も出来なかったんだ。あの時はいろんなIT系企業が立ち上がって、俺も頑張り時だったから。
それが……きっと裏切られたと思われたんだろう。それでそのまま…だ。彼はプライドが高いから、一度だめだった所には、何度もアプローチするなんて事は有り得ないし絶対にしないだろう」
翔平はそう一気に話した。
倉沢の翔平への恨みはほぼ逆恨み的なやつなんだろうけど、だけど、なんだろう、もう自分ではどうしようもない事への怒りの持っていき先へされてしまったような、そんな感じだ、何かの所為にしないとやっていけないんだろうなとは思う。
「実際のところは、俺はあいつの才能は認めてるから、うちに来てもらうように、今回、改めてきちんと交渉しようと思う」
……え、今なんて言った?雇う?
「雇うの?」
「もちろん、だって彼を、M社に盗られたくない」
結局はそれか。
「ってか、俺を襲ったんだよ?」
「うん」
「それなのに雇うの?」
「うん」
「……翔平のほうがすごく怒っていたくせに」
「それとこれとは話がちがう。それに、そういう事した奴を雇うのなんて、俺ってすごい太っ腹感あって、よくない?」
「それ、軽すぎるから……」
「でも、俺1人の一存じゃ、決まんないんだよ。俺、社長なのにさ」
"……ひとりでいろいろ決められりゃーねえ"
と、ひとりごちる翔平。
「今日、倉沢とまた会うんだよこれから、会社で。今度こそきちんと会わないと」
翔平はさっとベッドから起き上がった。
「もうすぐアポの時間だ残念。今日は、雅ちゃんとゆっくり出来ると思ったのに…やっぱり倉沢と会うの断ろうかなあ?」
とかぶつぶついいながら。でも、きっと断る気は全然ないんだと思う。
「倉沢先生が、翔平の会社にもし来ることになったら、やっぱり、俺は、翔平の会社には働きずらいじゃん」
だって、事情も知ってるし、襲ってきたやつだし。
「大丈夫、倉沢には雅ちゃんを近づけさせないし、秘書として俺のそばにいればいいし」
そう言って、俺に軽くキスをした。
「拗ねないでねー?すぐ帰ってくるし」
……な、なんだその論理?なんで俺が。
「拗ねてるって、なんでそうなる?」
「あ、雅ちゃんも今日、会社に来る?」
人の話、聞いてないし……。
「行くわけないだろ」
翔平は笑いながら、シャワーを浴びにいってしまった。
「雅ちゃんもおいでー」
と言われたけど、なんか絶対色んな事されるだろうから、行かなかった。
……だって、昨夜から色々あってもう疲れてるんだよ。なんかまだ眠いし……。
そうして俺は翔平が出掛けて行ったのも気がつかずに、いつの間にか眠ってしまった。
………
……
…
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