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須藤さん
………
……
…
そして今、目の前には、倉沢と翔平がいる。なんでこの2人が揃って俺の目の前に居るのかと言うと。
今からさかのぼる事、1時間前……。
俺はあれからいつの間にか寝てしまったらしく時間は夕方近くになっていて。ベッドルームの外からの話し声が聞こえて来て目が覚めた。
話し声は……。翔平とあと?
翔平の会社とここはとても近くて、というか。同じ設計者のマンションの事務所棟にあたるビルに、翔平の会社があって、住居棟にあたるマンションの一室がここだ。だから、別棟のほぼ隣同士なのであっと言う間に翔平の会社へ行ける。逆に言えば、あっという間に、会社からここに来れるという事になるわけで……。
まあ、ビル自体が大きいし高層なので、隣といっても移動時間はかかるけれども、でも、ものの数十分で来れてしまう。
ぼんやりしていると、寝室のドアがバッと開いて、翔平が"倉沢が来たよ?"と言ってきた。
仕事の話をした後、そのまま一緒に来たみたいだった。
ってかなんで?
俺はそのまま寝ていようかと思ったけど。起きてこっちに来て、とか翔平がうるさい。しょうがないから起きることにした。
なんだか気乗りがしない、だから、ゆっくり支度をして行く事にした。
リビングに行くと……。倉沢の他に、
「あ。須藤さん・・・・」
翔平の会社の専務の須藤さんがいた。須藤さんは、翔平が会社を立ち上げた頃から一緒に仕事をしている人で、翔平の会社で唯一、翔平に意見できる立場の人だった。翔平はなにかと頼りにしている。
……そうか、こういう人事とかの事、会社のシステムはよくわからないけど、翔平の一存で出来ないのは須藤さんの許可もいるんだ。
須藤さんは優しい人だけど、ちょっと怖いところもあるんだよな。年齢は翔平と変わらないようだけども、なんか迫力がある……。ってか彼は翔平の会社に来る前はバリバリな営業だったらしいから。人を見る目はあるんだよな。きっと。
俺と翔平の事は彼は知っている。
まあ、役職は、ここをよく打ち合わせとか極秘会議とかで使う事もあるから知ってるんだけど。
でも、その須藤さんは俺がリビングへ行って暫くしてすぐに帰ってしまった。
どうやら、なんとなく翔平が、倉沢との気まずさを緩和するために連れて来たようだった。
須藤さんは帰り際、俺に、にっこり笑って、
「がんばってね」
と言って来た。
……何を??須藤さん……。この気まずさ嫌だし…。ってか帰らないでください。
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