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鷹取光輝01
発車したはいいけれど車はすぐに信号につかまってしまった。すぐ横を同じ学校の奴らが通り過ぎていく。笑い声。まったく関係ないはずなのに、自分のことを笑われているように感じてしまう。スモークガラスなのは分かっていたけど、窓の下に隠れるようにずり下がった。次第に信号で足止めを食らったことすら、早坂のせいであるように思えてきた。ようやく青になったのに、早坂はちんたらしている。とっととアクセル踏めよグズ。もう一度座席を蹴っ飛ばした。オメガって皆、こんなにグズなんだろうか。いや、もしかしてこれは光輝に対する嫌がらせなんじゃないか。
光輝だって別にはじめっから、こんなにオメガのことを嫌悪していたわけじゃなかった。
小学校の頃から差別はいけないことだと、それこそ洗脳のように教え込まれてきたし、実際そうだと思っていた。アルファとかオメガとかベータとか、うまれながらの性で人生を決められるなんて理不尽だ。差別するひとの気持ちも、それを甘んじて受け入れているひとの気持ちも分からなかった。でもそれは、オメガのことを本当の意味では理解していなかったからだ。あいつらの醜さも、狡さも。
ヘッドレストの隙間から、なまっちろい首筋が見える。
いらいらする。
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