10 / 133
鷹取光輝02
「別に……父さんじゃなくたっていいじゃないか。他にアルファはいくらだっているじゃないか。とっとと『つがい』とやらを見つけりゃいいんじゃねーの」
「運命のつがい、なんて、そう簡単に巡り会えるものじゃありませんよ」
まあそりゃそうだろうけど。
「都市伝説みたいなものです」
「都市伝説……」
「でもオメガでも、アルファなら誰でもいいってわけじゃありません」
「あんたさっき、愛ある行為じゃない、って言ったじゃないか」
「ええ、でも、誰とでもできる行為じゃありません。私は旦那さま以外と、こういうことはできません」
アルファのちんぽなら何だって受け入れる淫乱……そんな偏見を、ちくりとやられたような気がした。
早坂じゃなかったらよかった。早坂の相手が父じゃなかったらよかった。そうだったら、今の早坂の言葉も、本当にそうだ、と素直に受け入れることができただろう。
「残念だったな、父さんとつがいになれなくて」
どうしてそんなことを口走ってしまったのか分からない。ただ何か、早坂の表情を曇らせる何かを言ってやらなければ、と、思いついたのがそれだった。けれど早坂はやはり落ち着いたまま、「畏れ多いですよ」とだけ、言った。
ともだちにシェアしよう!