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鷹取光輝02

 目が覚めたときには、ちゃんと自分の部屋のベッドにいた。 「坊ちゃん、坊ちゃん」と呼びかける早坂の声はぼんやりと覚えているけれど、果たして自力でここまで辿り着けたのだろうか。  まだ、身体全体にぼんやりと熱がこもっている感じがする。  時計に目をやると、夜の九時。中途半端な時間に目覚めてしまった。  身体を起こす。無性に喉が渇いていた。  サイドボードに置いてあった体温計に手を伸ばす。三十六度八分。順調に下がっている。……そのはずなのに、この倦怠感は何だろう。  とりあえず、水……  ベッドから起き上がって……でも……真っ直ぐ歩くことができない。ようやくドアに辿り着いたけれど、ドアノブに手をかけた瞬間に足が萎えて、床にへたり込んでしまった。何だこれ。  どくん、と、心臓が跳ねた。  激しく肩を上下させないと、息がちゃんと吸えない。全身が熱い。吐き出した息も、まるで高熱が出たときみたいな熱さだ。おかしい、何かが、おかしい……  思ったとき、つっ……と、尻から太ももにかけて、冷たいものが伝い落ちていった感触がした。汗……? いや、違う……  おそるおそる左手を尻の後ろに持っていく。少しふれただけで、そこがぐっちょりと濡れてしまっているのが分かった。パンツ……いや、ズボン越しなのに、はっきりと分かる。ちょっと押しただけで、じわ、と何か、染み出してくる。何……何だこれ……まさか、漏らした……? でもそれにしては、やけにぬるぬるしていて……  手をゆっくりひらく。指と指の間にかかった糸が垂れ落ちていくのを、ただ、呆然と、見つめてしまった。  何だこれ……いや、知っている……これは、まさか……  ズボンを下着ごとずり下げる。でも足が縺れて、中途半端なところで引っかかってしまう。ようやく脱ぐことができたそれは、濡れていないところを探すのが難しいくらいだった。すっかり色が変わった服……  ぱた……  ぱた、ぱた、ぱた……  服を脱ぐなり、液体が床に垂れ落ちる。やばい、よごしてしまう……  慌てて蓋をするように手を後ろに持って行って……  濡れる、なんて表現じゃとても追いつかない。底なしの沼に突っ込んでしまったような感覚に、思わず「ひっ」と声が漏れた。抑えるつもりだったのに、液体を逆に激しく噴き出させるような格好になってしまう。ぼたっ、と、蛙の卵を覆っている粘液みたいなものが、かたまりとなって落ちた。カーペットに、ひときわ大きい染みができる。これは……出ているのは、尻の穴……から、だ。どうしてこんなところから、こんなものが……熱のせいか……何か変なものでも食ったか……いや、これは排泄物じゃない、これは……  尻の穴の周囲に指を宛がっていただけなのに、ぬめりに誘導されるように、穴の中に中指が吸い込まれていく。つぷり。爪の先ほどが入っただけだった。それなのに、その指を中心に、ぶわっと震えが走った。熱、悪寒……違う、これは……快感、だ。気持ち……いい。気持ちいい、んだ。  そう分かった瞬間、それまで感じていた倦怠感がすうっと薄れていった。腕や脚は鉛を入れられたみたいに重いし、頭は霞がかかったみたいにぼんやりする。それなのに、そのことが不快ではなく、むしろ心地よく感じ始めている。何も考えたくない。沈んでいきたい。

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