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鷹取光輝03

 ブランケットを身体に巻きつけ、何とか立ち上がる。一歩、二歩、歩くたび、点々と染みができる。  充電していたスマホに手を伸ばす。助けて、助けて、誰か…… 『早坂』  押し間違えないよう慎重に、早坂のアドレスをタップする。一回、二回……こんなときに限って早坂はなかなか出ない。諦め、コールを止める。  家の中にいるのに……こんなに近くにいるのに……  暗くなった画面に、自分のマヌケな顔が映っている。顔を背けたとき、スマホが震えた。早坂からの着信。まったくタイミングが悪い。もうスマホは放り投げてしまっていて、通話ボタンを押す気力も残っていない。一回途切れ、そしてまた再び鳴り出した。手を伸ばそうとしたタイミングでまた切れた。どうしてことごとく……。笑うしかなかった。地面に顔を伏せたときドアがあいた。面と向かって顔を合わせているというのに、早坂はしばらく電話を鳴らしっぱなしだった。まったくしようがない……でも…… 「はやさかぁ……」  漏れ出た声は、自分のものじゃないみたいに弱々しかった。その声の弱さに引っ張られるように、張りつめていたものがぷつん、と切れた。 「……もうこれ……どうしたらいいのか分からないんだ……」 「坊ちゃん、薬は……」  言いかけ、カラになった瓶を見つけたらしく、絶句している。 「飲んだ……でも全然効かない……効かないんだよ」  早坂に手を伸ばす。とにかく誰か、何かに縋りたくてしようがなかった。受け止めてほしかった。これ以上落ちることはないと、受け止めてほしかった。 「どうなったのかな。俺……どうなったのかな。なあ、分かんないんだよ。教えてくれよ。どう、なっちゃったのか……教えてくれよ、なあ!」  早坂の肩をつかむ。おぞましい液体で早坂の服が濡れる。けれどひるむことなく受け入れてくれている。そんなことが、信じられないくらいに嬉しかった。 「坊ちゃん……」  何か言いかけ、でも早坂は一度目を閉じると、覚悟を決めたように目をあけた。 「ほんの少しだけ。我慢していただけますか」  ぐっと身体を引き寄せられる。嫌なことは見なくていいと言われているような、小さな子どもに戻ったかのような感じがした。早坂の首根っこにしがみつく。ぬくもりを感じながら、目を閉じた。早坂の手が尻に宛がわれる。今まで一度だってふれられたことのない場所……他人なんかにふれさせちゃいけない場所……そこを、ふれられている。  欲しくて欲しくてたまらなかった。でもいざ与えられるとなると、どうしても知らず知らず力が入ってしまう。その緊張を解きほぐすように、背中を撫でられる。それはとても絶妙なタイミングだった。今までの早坂からは考えられないくらいに。光輝の心のうちを分かってくれた動きだった。  もっと、聞くに堪えない音が響き渡るかと思っていた。でも早坂の指は抵抗なく、するり、とナカに入ってきた。しばらくじっと動かされないままでいると、そのまま溶けてしまいそうで、動かされてはじめて、ナカに入っている、ということを実感できる。一本じゃすぐに物足りなくなった。締めつけたくて、満たされたくて、痙攣する。けれど得られるものより、出ていくものの方が圧倒的に多い。ちょっと意識して力を入れるだけで、だらだらと愛液がこぼれ出てしまう。濡れている早坂の手が目に入った瞬間、くらくらと眩暈がした。  早坂の指の動きは単調だった。でもその方が何故か、より感じる部分を意識させられてしまう。指の動きにあわせて腰が揺れる。一番敏感な部分を早坂の指が掠める。……早坂の指がそう動いたのか、それとも光輝自らそこに当てるように動いてしまったのかは、分からなかった。

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