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鷹取晃人02

 鷹取の家に来てから、初めての夏休みだった。  正直、修哉と知り合っていなかったら、ひとりきりの夏休みを持て余していたと思う。鷹取の家のひとたちは揃って田舎へ帰ったが、晃人だけは残っていた。晃人も一緒に連れていきたい父と、連れていきたくない義母との間で険悪な雰囲気になっていたのを知っていたから、晃人の方から行かないと申し出た。そうしたら今度は伯母から、どうして行かないのかと嫌味を言われた。あなたはもう鷹取の人間なのよ、その自覚がないの……  何を選んでも否定されることに、ほとほと疲れ果てていた。  でも修哉と一緒にいる間だけは、煩わしいことをすべて忘れることができた。  修哉が通っていた小学校の開放プールに、妹たちを一緒に連れて行った。  鷹取の家の人間は『俗っぽい』と一蹴した夏祭りにも、一緒に行った。浴衣を着ている子たちがほとんどの中、晃人と修哉だけが、それぞれ事情は微妙に違うけれど、普通のTシャツに半ズボンで、それが密かに嬉しかった。  妹たちに催促されて、射的でた○ごっちを当ててあげた。妹たちはその後しばらく熱中していたようだけれど、すぐに育てるのが面倒くさくなったらしい。修哉の鞄には、テトリスとた○ごっちがぶら下がるようになった。でも修哉もどうやらすぐに死なせてしまうらしい。 「俺、駄目なんだよこういうの、辛気くさくて」  何十分もブロックを崩し続けられる集中力はあるのに、それとはまた別みたいだ。試しに晃人が預かってみると、初回でま○っちまで簡単に行けた。そうするとすべての形態をコンプリートしたくなった。お○じっちまで行ったときは、妹たちよりはしゃいでいたかもしれない。そんな晃人の傍ら修哉は、「ひとって本当、向き不向きってあるんだな」と、冷静だった。 「何だよもっと感動してくれよ」 「感動してるよ。何か晃人って、いいパパになりそう」 「は」  そのとき、何て返しただろう。 「馬鹿言ってんじゃねえよ」? 「いやいや発想飛びすぎだろ」? 「ゲーム中の子育てが上手くてもな」?  忘れてしまった。  でもそれを言われたときのことは何故か、鮮明に覚えている。それを言われたときのくすぐったさも、修哉の表情の柔らかさも、すべて。

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