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鷹取晃人02

 ちょっと腰を引いただけで修哉は過剰に反応する。そんなに『これ』がいいんだろうか。求められている、と思うと……また一段階、熱が上がった。 「抜かないよ。修哉が満足するまで、抜かない」 「あきと……もういっかい、キスして」 「ん……」  くちづけをしながら別の場所を愛撫する、というのにもその頃になってようやく慣れてきた。どこにふれても修哉は身をよじらせて、甲高い声を上げた。修哉は「いい」と言ってくれたけどその声はあまりにせつなくて、本当に修哉を『助ける』ことになっているのか、自信が持てなかった。けれど逆に、修哉にふれられることによって確信する。腕とか、腹とか、性感帯でも何でもないところだったけれど、ちょっと撫でられただけで甘くとろけそうになる。喘ぐ息がかかるだけで、麻酔にかけられているみたいになる。こんな風に自分が感じているように、修哉も感じてくれているに違いない、と。  大切にされている、求められている。指先からそれが滲み出ている。そんな感じで自分の一番大事なところをさわられたら、あっという間にイってしまうだろうな……なんてことを、既に一番大事な部分で受け入れてもらっているくせに考えてしまうのがおかしかった。 「すごい……修哉のナカ、熱い……」  これだけ熱かったらさぞ苦しいだろう。  修哉は小刻みに震えている。でもナカの痙攣は、それよりもっとずっと大胆で、卑猥だった。  たすけて、と泣いているのは確かに修哉だ。でもその身体はもう、修哉のものじゃなくなっているみたいだった。意識を乗っ取られる、みたいなSF漫画は読んだことあるけれど、これは身体を乗っ取られているんじゃないか。たぶん、修哉自身じゃどうすることもできないんじゃないか。それなのに……可哀想だ。なりたくてこんな身体になったわけじゃないのに。あんまりじゃないか。一方的に邪魔者扱いされて。蔑まれて。蔑む奴ら、どうせオメガのひとりも救うことができないくせに偉そうに。でも自分は違う。少なくとも修哉は……修哉だけは救うことができる。 「あっ、あっ、あっ、あっ……」  自分の腰の動きに合わせて声を上げる様が愛おしかった。ペニスは反り返って、真っ赤に腫れた亀頭がぴた、ぴた、と腹に当たっている。それが視覚的に、最高にキた。修哉は今、自分に、完璧に、すべてを委ねきっている…… 「……うや、修哉……っ、いい……?」 「ん……もっと……もっ、とぉ……」 「もっと? どうしたらいい?」 「わ、かんな……ああ……ずっと、はなれたくない……っ」 「修哉……」 「何も考えたくない……忘れたい……ひとりになりたくない……あ、たまのなかとか……むねのなかとか、もやもやして……何か、分からなくて、何か、もう、押し潰されそうで、張り裂けそうで、ワケ分かんなくて……怖い、何も考えたくない、苦しい……もう、ずっと、こうしてたい、苦しくて、ずっと、晃人、お願い、ずっとこうしてて……!」  一体何度目のキスだか分からない。下半身から漏れる音が大きくなっていくのに比例して、くちづけも大胆になっていく。何度か鼻と鼻がぶつかったし、口の周りがべたべたになった。 「ああっ、あきと、そこっ……はじける……な、んか、はじけるの……っ」 「はじける?」 「あっ、あぁあっ、あ、あ、そ、こ、……あああ……っ!」  腕も、脚も、全部、きゅうっ、と密着させてくる。ほんの少しの隙間も作らないように。  どうやったらイく、とか。どこをこすれば気持ちいい、とか。そんなこと、何も分かっちゃいなかった。修哉が気持ちよくなっているのは、晃人が刺激しているから。晃人が気持ちよくなっているのは、修哉に包み込まれているから。それなのに、この快感は自分たちが作り出したものじゃなくて、どこか別のところから急に降ってきたもののように思えてならない。自分たちは荒波に揉まれる小舟のように、抱き合いながらただその波に揉まれているだけだった。  修哉は弾ける、と言ったけど、晃人は逆に、ものすごい小さな一点に収縮していく感じがした。  潰れてしまう、一点。 「しゅ、う……っ、そんな……したら、やばいっ……出る……っ」 「もっときて、もっとおく、が、いい……っ、ぎゅっとして……」 「出……っ、だ、めだっ……出るから……」 「だして、おねがい、おねがいだから……っ! あきと、あきと……あきと……っ!」 「修哉!」  それしか言葉を知らないみたいに、互いの名前を呼んだ。

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