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鷹取晃人03
実際は五日じゃすまないだろう。家のことは全部ひとりでやらないといけないし、バイトだってある。病院だって定期的に通わないといけないだろう。それなのに、「ただそれだけのこと」と、どうしてこんなにあっけらかんと言い切ることができるのだろう。
何も言えずにいると、不意に眉間を人差し指でぐりぐりされた。
「だからそんな顔すんなって」
「いや……」
すごいな、と褒めるのも、大変だな、と同情するのも、似つかわしくない気がした。これがまったく面識のないオメガ相手だったら、逆に何の抵抗もなく、尊敬する、とか、そんなに頑張らなくていいんじゃないか、とか、口にできただろう。でも自分たちの間にはそういう言葉は相応しくない気がした。
直視できずにいると、頬を両手で挟まれて、強制的に顔を向けさせられた。何、と言う間もなくくちづけられた。さっきまでは強い……男らしい雰囲気だったのに、一転して雌猫みたいな雰囲気を漂わせている。おかしい。今は発情期じゃないよな……?
「晃人、しよ?」
「いいけど、その……今は『その』日じゃないんだよな?」
「『その』日じゃなかったら、やりたくない?」
前に自分が言ったことを言い返された。どきりとすると同時に、修哉も同じ気持ちだったんだ、と、それだけで舞い上がってしまう。
自分が求めるのと同じくらい、修哉にも、自分のことを求めてほしい。
「いいけど」
「正直俺さ、発情期のときより……普通のときの方が、やりたい、って思う。……晃人、とは」
やりたい。
あからさまな言葉だったけれど、修哉が言うと卑猥に聞こえなかった。
「発情期のときはさ、何かもう、やらなくちゃどうしようもない……って感じだから。皮膚とか神経とか頭ん中とか焼き切れそうでさ。火だるまになって……のたうち回ってる感じ。頭から水ぶっかけて、消火してもらいたい。だから正直、気持ちいいとか、そういうのは二の次で……。でも晃人とは、気持ちいいこと、が、したい。晃人とはさ……。ちゃんと……やりたいな、って思ってから、やりたい……って、いうか……」
気持ちいいことがしたい。
身体も、心も、悦ぶことがしたい。
強烈な告白に、くらくらした。
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