首筋に舌を這わせる。だんだん、そこばかりに集中していく。そこをずっと舐め続けているのが気持ちよかった。舐め続けているとそこが、一番の性感帯に作り替えることができるような気さえしてくる。 　友だち、は、嫌だ。 　じゃあ……恋人？ 　それも何だか、むずむずする。じゃあ自分たちは一体どうなりたいんだろう。一緒にいて、身体を重ねて、お互い以上にお互いのことを知っているひとはいなくて……、それ以上の一体何を望んでいるんだろう。このままで何がいけなかったんだろう。 　吊り橋が揺れるどきどきを、恋のどきどきと勘違いしてしまうみたいに、胸に拡がっていくもやもやは、本当に修哉に対するものだったんだろうか。進路とか、将来とか、鷹取のこととか、アルファの同級生のこととか、そういうものに対するもやもやを、修哉に対するものだと勘違いしてしまっているんじゃないだろうか。それをこんな形で発散させているんじゃないだろうか。自分の感情を自分でコントロールすることができないどころか、その正体が一体何なのかすら、理解していないんじゃないだろうか。 　はっきりとした、意図があったわけじゃなかった。 　でもその、まるで媚薬が塗られているみたいに虜にさせられる首筋に……そっと、歯を、立てていた。 　その瞬間、バッと修哉が身を引いた。 　目と目が合う。 「ごめん」と、同じタイミングで言っていた。きっとその中に含まれている意味はそれぞれ、違っただろうけど。 　目を合わせたまま、修哉が怖々、といった感じで首筋に手をやっている。 「ごめん」 　それしか言葉が出てこなかった。 「……こっちこそ、何か、ごめん。晃人のこと嫌、とか、そういうわけじゃないんだけど。その……そういうのは……」 「うん、ごめん、俺も、何ていうか、その……」 「そういうのは何かちょっと……早いかな、って、思って……」 「うん、分かってる……ごめん、ちょっと興奮して、歯が当たっただけ、だから、その……。そういうの、軽々しくやるもんじゃない、ってのも、分かってるから」 　子どもだな。 　痛感する。 　大人の真似事はできる。でも、大人のように責任を負うことはできない。 　中退させられた同級生のことを唐突に思い出した。大人のように最後まで責任を取れないのなら……なら何で、こんな欲求だけはあるのだろう。好きとか、自分のものにしたいとか、愛してるとか、性欲とか、そういう無責任な、暴走しがちな感情だけは、どうして先に…… 　自分のものにしたい。自分だけにしか欲情しない身体にしたい。 　つがい、になりたい…… 　修哉とつがいになる。 　でもそうなったあとの未来を、想像することができなかった。 　最後まで育てきった育成ゲームみたいに、それ以上進化することも死ぬこともなく、リプレイされることもなく、飽きられたら最後……電源を切られ、二度と立ち上げられることがないみたいな…… 　そんな不安を吐き出すように、精を吐き出す。