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鷹取晃人04

 きっと忙しくなる。楽しいことだっていっぱいある……  だから自分に対する興味も薄れていく。  そう、修哉が不安がっているのは分かった。でも、そんなことあるはずがない。大学生になっても社会人になっても、修哉に対する思いは変わらない。  入学すると初めは慣れるのに必死で、修哉と連絡を取る機会は減ってしまったけれど、でもそれは自然なことだろう。修哉も修哉で新しい生活があるだろうから、邪魔しちゃいけない……。何度か約束はしたが、互いの都合が合わずに流れてしまった。しかたない。それに今さらそんな、付き合いたてのカップルみたいにべたべたしなくても、自分たちはしっかり、深いところでつながっているから大丈夫……  広いキャンパスとか、九十分の講義とか、講義のたびに変わる教室とか、いろんな出身・年齢のひとが集まっている環境とか……そういったあれこれに慣れ始め、ゴールデンウィークも終わった頃、久々に修哉の部屋に行った。お互いの近況を簡単に報告し合う。久しぶりに会えて、嬉しいはずだった。でも何故か、会話が続かない。話しかけて、でも、(あ、いいや……)と引っ込めてしまいたくなる。「え~つまるところ~」を連呼する教授のこととか、いつも後ろの席でべたべたしているカップルがいるとか、講義棟はきれいだけど学食の別棟は超ボロいとか……。大学の友だちには何気なく話せることが、修哉相手だと妙に、緊張する。そんなことを言って何になると思ってしまう。そんな……自分たちはわざわざ、違う世界で生きているんだ、と自覚させるようなこと。  自分に合わせて無理に笑ってくれているな、と思う瞬間が幾度もあった。それと同時に、自分も、修哉の話に無理矢理笑顔を作って乗っかっている……

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