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鷹取晃人04
母がもし、今の自分を見たら何と言うだろう。子どもができたと言ったら……母は何て言ってくれただろう。思い出の母の姿を、声を、必死に引っ張り出してくる。でもやっぱり思い出は思い出でしかなくて。それ以上のものはなくて。いくら人間らしいふるまいをしても結局、データの蓄積でしかないアンドロイドみたいで。
これが足の指で、大腿骨で、骨盤で……と、スタッフに指示されるままに骨上げをした。途中、箸が何度も滑った。ひとの骨を壺に入れる。厳かな空気の中、とても残酷で、でも、まるで焼肉屋で肉の説明を受けているみたいな、とても滑稽なことをしているように思えてならない。火葬場には次から次へと遺体が運ばれてくる。その遺族たちも、今もどこか別の場所で、自分と同じことをしているのか。こんなことを今までのひとたちは皆、投げ出さずにやり遂げてきたのか。
「脊柱に、手の指……肋骨、肩甲骨……これが歯ですね」
きっと今まで、何百何千と同じことを説明してきたんだな、と分かる口調だった。母の死は所詮、何百何千の死のうちのひとつでしかない。悲しみの横っ面を、淡々とした現実が張る。
「これが喉仏……最後に、頭蓋骨を入れてあげてください」
壺ひとつに収められた母。白いカバーをかけられたそれを膝の上に載せていると、何か、『うみ落とした』ような感覚がこみ上げてきた。失われた命なのに、ここに何か、新しいものがあるような……
いや、ここにあるのはあくまで骨で、子どもをうむのは修哉。
でもぎゅっと抱いていると、鼓動が聞こえてくるような気がしていた。ぬくもりを感じられるような気がしていた。
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