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早坂修哉01
そういえば、自分のことがいつオメガだと分かったのか、と、君に訊かれたことがありましたね。はっきり分かったのはもちろん身体に異変を感じ、検査を受け、結果を突きつけられたときでしたけど、そうじゃないか、と思ったのは他でもない、晃人と出会ったあの日、あの瞬間でした。この私の存在感のなさとか要領の悪さとか生きにくさとか、そういったものは努力や経験でどうにかなるものではなく、あらかじめ決められたものではないか、と、彼と自分を対比したとき、あっ、と気づいたのです。でもそのときの思いは、絶望を伴ったものではありませんでした。すとん、と、受け入れられたのです。今まであいていた心の隙間、どんな形のブロックでも埋まらなかった隙間に、ようやくぴったり嵌まる形のものが落ちてきた感じでした。彼がアルファなら、自分がオメガでもしかたない。むしろ喜んでオメガでいられる、と、まだ彼がアルファだと分からないうちから、そんな風に思っていました。
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