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早坂修哉01
晃人はもしかしたら、アルファじゃないのかもしれない。
そう疑っていたのは、たぶん、私ひとりだけだったと思います。晃人の家族も、周囲のひとも、そしておそらく晃人自身も、まさか自分がアルファでないかもしれないなんて、夢にも思っていないようでした。いや、アルファでない、というのは言い過ぎかもしれません。アルファの中にも、ベータやオメガ、それぞれの血は混じっていて、その中でアルファの割合が非常に少ないのかもしれません。いや、細かいことはどうでもいいのです。ただ、この疑念を伏せたまま、発情期をどうやり過ごすかは悩みの種でした。
晃人の責任感の強さ、潔癖さが、こんなときだけは少し、疎ましかった。それらしい理屈をつけて、発情期の間、晃人を遠ざけることができないかと思い巡らせましたが、晃人の真っ直ぐな思いには、とてもかないませんでした。
それに、嬉しかった。
これだけ自分のことを思ってくれるひとがいるというのが、素直に嬉しかった。
運命のつがい、というものを意識し始めたのも、その頃だったと思います。晃人とつがいになれたら……。それは今までの、そしてこれからの一生で、私が手に入れられる、ありとあらゆる幸せの中で、きっと一番の幸せになったはずです。でもつがいになれるのは、アルファとオメガ。つがいになろうとして……でもなれなかったら……
自分たちは『運命』じゃなかった、と分かってしまうのもショックですが、もし、晃人がアルファではない、と分かってしまったら……晃人自身に、分かるようなことがあったら……
それが私は何より、怖かった。
つがいになりたい。
晃人も同じ気持ちであることは分かっていました。戯れに首筋に歯を立てられることもありました。戯れ……のように見せかけて、本気であることは痛いほどに伝わってきました。それを押し返さなければならないことが、本当につらかった。晃人のことが好きなのに、こんなに大好きなのに、思いとは裏腹な行動を取らなければならないことが本当につらかった。私だってつがいになりたい。そんな裏切られたような目で見ないでほしい。分かってほしい。どうやったら晃人にこの思いが伝わるのか。こんなに、こんなに、好きなのに。
けれど、伝わってほしい、という思いは伝わらず、伝わらないでほしい、という思いに限って伝わってしまうものです。私はだんだん、晃人とふれあうことに臆病になっていきました。
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