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再び・鷹取光輝01

 くっそ、あいつのせいだ、絶対あいつのせいだ、どうしてくれんだよマジ許さん小田原春陽!  直後に来た発情期は、いつもより重くて最悪だった。  化学的に証明されているわけじゃないけど、アルファと接触している時間が長いと、次の発情期が重くなる、なんて話を聞いたことがある。それだ。絶対それだ。べたべたべたべた、さわりまくられたから。あいつ、本当に……くそくそくそっ! 洗っても洗っても取れない手垢をつけられたみたいだ。菌だ、菌。春陽菌。あいつ見るからに変なもん発してそうだもんなあ。あああ、もう。……あああああ!  影響されてすっかり小学生みたいな思考になってしまっている。  脳内に浮かんだあいつの顔をぼこ殴りする勢いでディルドを抜き差しし、その顔にぶっかけてやる勢いで射精した。頭がぐらぐらと煮えたぎっている。身体が熱いのは発情のせいか、怒りのせいか分からなかった。……怒りながらでも射精できるんだな。これは初体験だった。初体験……だから何だって話だけど。  よごれたタオルを洗面所に持っていったとき、早坂と出くわした。 「薬、効かないですか」 「いや……出したらだいぶマシになった。大学……入ってからはちょっと落ち着いたかな、って思ってたんだけど、何か違ったみたい……っつーか、まだ自分でもよく分かんねえわ、この身体」 「季節とか直前の体調とかによってもだいぶ左右されますからね。最近、夜遅かったからじゃないですか? やっぱり三年になると、課題、大変なんですか?」 「あー……いや、それは全然別に大変じゃないんだけど。……なあ、アルファの傍にいる時間が長いとさ、発情期が重くなる……とか、本当なのかな」 「よく聞きますけどね、そういう話。でも私自身はあまり……。もしかして、大学でアルファの方が……?」 「あ……うん。うちの大学、そんなにアルファはいないはずなんだけど、ゼミで同じになっちまって……。それから何かと会う機会が多い、っていうか……つきまとわれてる、っていうか……ともかくテンションが変な奴でさ、つがいになれなれってうるさくって……」  冗談で言ったつもりだったけど、「つがいに……?」と聞き返す早坂の表情がマジで、あ、しまった、と思った。『お坊ちゃま』がアルファにキズモノにされたら一大事、って、余計な心配をさせてしまったか。 「大丈夫ですか。しばらく送り迎え……」 「しなくていい。しなくていいから。変な奴なんだけど、悪い奴じゃないから……たぶん」  尻ポケットに突っ込んでいたスマホが震えた。噂をすれば何とやら、で、春陽からのラインが立て続けに五件、入っている。アプリを立ち上げている間にも、また一件。休んでいた間の課題を教えてくれるのは有り難かったが、合間合間のスタンプがウザい。画面をよごすな。どれだけスクロールさせるんだ。肝心の文章が分かんないじゃないか。ったく……  すぐに返信するのも癪で、一旦電源を切る。

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