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再び・鷹取光輝02

『悲しみをどう乗り越えてきたか、ですって? 乗り越え方なんてありはしないわよ。解決してくれるのは時間だけ。ただ忘れるだけよ。でも忘れるなだの、後世に語り継いでいかなければならないだの、あなたたちもそう、そうやっていちいち思い起こさせるようなことをする。どうして。私にそんなことしなければならない義務がある?』 『本当、そうですよね。申し訳ありません』 『若いからまだ想像つかないでしょうね。大切なひとを突然奪われたことなんてないでしょう。この憤りを一体誰にぶつけていいのか分からない。いっそあの子が凶悪犯に殺されでもしていた方がマシだったんじゃないかって思うわ。はっきりと、そいつのせいにしてやれるもの。でも誰のせいにもできないじゃない。そうするとだんだん自分のせいのような気がしてくるの。私があの子に……あの子に……早く逃げなさいって言わなかったから……。こんな気持ち、あなたには分からないでしょう』 『すみません、そうですね……軽々しく分かった、なんて、とても言えません』  ……どんな気持ちで言ったんだろう。  ボイスメモの、一時停止ボタンを押す。  家に帰ってひとり、レポートをまとめていた。キーボードを打っていた手を止め、背伸びをする。音声が止まると、部屋の中が急にしんとなった。目を閉じる。頭の中にはまだ春陽の控えめな、それでいて芯のある声が残っていた。

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