129 / 133
再び・鷹取光輝02
「分かんなくていいから、だから早くここにお前の、入れろよ」
自分でぐっと穴を拡げ、こぼれてきた液体を受け止めさせた。……ああ、よごしてしまった。春陽の指を。きれいな指を。
膝頭を春陽の股間に押しつけて促す。まさかまだ準備は整っていないだろうと思っていたのに、春陽のそれは窮屈そうにズボンを押し上げている。
こいつも……興奮してた……? いつの間に……? まさかこの姿を見て……?
思わず頬が熱くなった。
身体は正直。
AVみたいなワードが頭を回る。でもそうだ。口では余裕かましたって、憎まれ口を叩いたって、お互いに身体はもう、相手が欲しくて欲しくてたまらないと訴えている。こんなにも分かりやすく。
嬉しい。求められている、ということが嬉しい。それに知らなかった。自分がこんな単純なことで、舞い上がれる人間だということが。
ズボンとパンツを一緒にずり下げてやる。露わになっていく春陽の肌。絶対言わないけど、死んでも言わないけど、光輝も春陽の裸を、きれいだ、と思った。
腰に脚を絡めて、引き寄せる。
「い……いいの? もう入れちゃって……その、慣らしたり、とか……」
「さっき何見てたんだよ。指三本入ってただろ」
「う、うん……」
狙いが定まらないのか怖じ気づいているのか、さっきから穴の周りを亀頭がうろうろしている。ここまで来て何やってんだよもう。ぐずぐずしてたら余計に疼きがひどくなるだろうが。……早く入れろ!
「は」と口をひらきかけたとき、それは唐突にやって来た。
「うっ……く、あ……っ!」
突然の圧迫感に、思わず声が漏れた。ったく、入れるなら入れるって言えよ馬鹿! タイミングが合わずに逆に力入れちまったじゃねーか!
十分にほぐれていたはずだった。すんなり受け入れられる太さのはずだった。それなのに、同じ太さでも、指やおもちゃなんかの比じゃなかった。熱い。内臓を押し上げられるみたいだ。入れろ……なんて偉そうに言ってしまったけれど、本音を言うなら一回抜いてほしい。休ませてほしい。けれど一回閉じてしまった目をおそるおそるひらき、つながっている部分を視界に入れた瞬間、あっという間に快楽が苦痛を押し返した。
つながっている……ああ、つながっているんだ、春陽と……
腰が勝手に、奥に誘い込むように揺れてしまう。
「も……動いて平気……?」
「ん……もっと、奥……欲しい、から……」
春陽が覆い被さってくる。もうずいぶん奥まで来たと思ったのに、体勢を変えることで、まだこんな奥があったのかと初めて知る。視界が春陽でいっぱいになる。
ここを……ここをふれたのはこいつしかいないんだ。自分ですらふれたことのない場所を、こいつにふれられているんだ……そう思っただけでまた、快感がぐん、と膨れて、苦痛が隅っこに追いやられる。さっきから、直接的な刺激ではなく、自分の脳が勝手に快感をうみだしている。
ぐっ、と腰をつかまれる。それにすらぞくぞくしてしまう。気持ちいい。気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい……こんな気持ちよさ、知らなかった。こんなに気持ちいいのは、春陽がアルファだから? ……いや、そんなこと、もうどうでもよくなっている。
ぐちゅぐちゅと粘膜が擦れ合う音、肌と肌とがぶつかる音、押し殺したような吐息……聞こえる音すべてが恥ずかしくてたまらない。セックス、ってこんなに恥ずかしいものだって知らなかった。恥ずかしくて、でも、恥ずかしければ恥ずかしいほど、気持ちのいいものだってことも。
「た、かとり……」
「何……」
「俺……もう、出……そう、なんだ、けど……っ」
「もう……早くね……?」
全然早くない。むしろ早く出してほしい。なのにわざとそんな言い方をしてしまった。自分ばかりが余裕を奪われているようで、ちょっと、悔しかったから。でも、あまりにも潔く白旗を揚げられてしまうと、悔しいとか悔しくないとか、つまらないことで意地を張ってしまった自分が小さく思える。春陽はこんなにも、自分をさらけ出してくれているのに。
ともだちにシェアしよう!