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慌てて呼びかけると、つぐみはパーカーのポケットに手を突っ込んだまま、振り返った。 「……だって俺、早く大人になりたかったから」 まっすぐに周の顔を見て声を張り上げる。 「早く周さんに、追いつきたかったから」 そう言ったあと、我に返ったように視線を揺らし、眦を染める。 そして急いで前に向き直ると、つぐみはまた、歩き出した。 遠くから、夕刻を知らせる切ないオルゴール調の調べが聞こえてくる。 「みぃ……」 周の瞳に残ったつぐみの眼差しは、ひどく大人びたものだった。胸がざわめく。 「……そんなに急ぐなよ」 周は呟くように言って、駆け出した。 ――そんなに急いで、大人になるなよ。 周はその背中に追いつくと、心の中でもう一度、つぐみに向かって囁いた。

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