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『どうして、みぃにうそをつくのですか? どうして、みぃをひとりぼっちにするのですか? どうして、みぃにあいにきてくれないのですか?』 そこには、つぐみのどうしようもない落胆や混乱、憤りが籠められた問いが、書き連ねてあった。 「…………」 周は困惑のうちに読み進めていく。 『みぃはあなたにあいたいんです。 だって、みぃはあなたがだいすきだからです』 周の胸が、鋭い痛みに締め付けられた。 『あえなくても、とおくにいても、どうか、あなたがしあわせでいますように』 それは、自身を捨てた母親へ宛てた手紙だった。 仮に投函しても、返事など来ないことはつぐみにもわかっていたはずだ。 いや、どこに送っていいのかさえ、わからなかったはずだ。 つぐみは書いた後でやっぱり捨てようと思い、くちゃくちゃに丸めたのだろう。 しかし思い悩んだ末、小さな手で丁寧に皺を伸ばし、行く当てのない想いとともにこの絵本に挟んだのか。 ここに挟んでおけば、いつかこの想いが届くと信じたかったのか。 「……っ」 周の目頭は堪えきれないほどに熱くなった。視界が歪む。 周にさえ伝えられなかったつぐみの想いが、そこにはあった。 ……俺にだからこそ、伝えられなかったのかもしれない……。この絵本を読んで、みぃはやはり母親のことを思い出していたんだ……。 胸の奥に切なさと、無力感とが押し寄せてくる。 『わかってる。俺に対するつぐみの想いが、どんな種類のものであれ』 野崎に言っておきながら、その言葉は周自身に深く突き刺さっていた。 「みぃが本当に求めているものは……俺じゃない」 つぐみが求めるもの、それは――。 『みぃはあなたにあいたいんです。だって、みぃはあなたがだいすきだからです』 目の前の文面が周に真実を突きつける。 子供の頃から、つぐみの世界には、周しか居なかった。 人は、誰かに愛されたいと願う。 だが、それと同じくらい、いや、それ以上に、誰かを愛したいと希うのだ。 ……みぃは愛してもいい存在が欲しかったんだ。だから、行き場のなかったみぃの愛は……。 紙片を持つ周の指先が震えた。 「みぃは、俺を愛するしか、なかったんだ……」 苦々しい声音で、先ほど呑み込んだはずの恐れていた言葉が、口端から漏れた。

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