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愛してくれてありがとう 5
「え、リュウ?」
リュウの突然の行動に驚いた俺は、もう一度目の前にある顔をジッと見つめた。
「瞬? どうしたの? 何泣いてるのさ」
低音のリュウの声とは少し違う、優しくて愛しい声が聞こえた。
「タカト」
「何? 瞬…」
状況を把握出来なくて、周りを見回すと俺は、いつも鷹人と愛を語り合う、俺達のベッドの中にいた。
「あぁ・・・良かった」
俺は、鷹人が居なくなってから何度も見た夢を、久しぶりに見ていたようだ。
後悔する俺、そして再び気持ちを封印して、守るべき家庭の為に尽くそうとする俺――。
でも、最後の方は、違ってたなぁ……。
「何か、夢見てたの?」
鷹人が不安そうな顔をしながら、俺を力強く抱きしめた。
「うん…」
俺は、大好きな鷹人の胸に顔を埋めて、甘えるように返事をした。
「ねぇ、瞬?」
「なに?」
「もしかして、リュウさんの事、好きだったの?」
「はぁ?」
「だってさ、うなされてたから、抱きしめてあげたのに、瞬ったら『リュウ』って言いながら泣き出すんだぜ…? すっごいショックだった」
鷹人が困ったような顔をしながら俺を見つめていた。
「違う違う。リュウが好きなんて、それは無いって。ただ、リュウが俺にキスしたから…」
「え?! 何でそうなるんだよ、瞬? それって、願望とかじゃないの?」
慌てて夢の事を言ったら、鷹人が怒り始めてしまった。何だよ、ただの夢だってば。 『願望とか』なんて有り得ないでしょ! そうは思ってるんだけど、何でそんな夢になったのか、微妙に気になる所。
「まさか。それだけは止めて欲しいよ」
そうだよ。いくら優しくしてもらったとしても、あいつとだけはキスなんてしたくない。
いや、あいつだけじゃなくて、鷹人以外の誰ともキスしたいとは思わないし。
「じゃあ、どんな夢だったのさ?」
拗ねたように鷹人が言った。
「鷹人が俺の前から居なくなった頃の夢」
「でも…何でリュウさんなわけ?」
「…あんまり言いたくないんだけど…空港からの帰り、ボロボロになってる俺を、リュウが見かねて、慰めてくれたんだよ」
そう言ったら、鷹人が眉間にシワを寄せて、唸りだした。
「なぁ、瞬? それって、どういう慰め方?」
鷹人の手が、俺の股間を撫ぜた。
あの頃の俺の辛さをお前は知らないのか?!って、きっと あの時は鷹人も辛かったんだよな。
「アホか…普通に言葉でだよ」
「ふーん。じゃ、何で夢でキスしてたんだよ?」
「そんなの分からないよ。夢の中のリュウが、あまりにも哀れな俺に同情してくれたんだろ?!」
「…ま、良いか。夢だけだし」
「そうそう・・・」
まだ、ちょっと不満そうな顔をした鷹人が、俺のパジャマの中に手を突っ込んできた。
「ねぇ、瞬、その夢、よく見るの?」
「その夢って、リュウの?」
そう言ったら、鷹人が俺の胸の先をギュッと摘んだ。
「イテ!」
「違う。俺の…」
「前はよく見たよ。でも、今は殆ど見ないかな」
「そっか…」
鷹人の手が、今度は優しく胸の先端を転がした。
「もぅ忘れたい。辛くて苦しくなるから」
熱の集まって来た身体を鷹人に押し付けながら囁いた。
「それだったら、そんな夢なんて、見れなくなるくらい、たくさん愛し合おうよ。 俺は、2度と瞬の前から居なくならないから。安心して」
鷹人が優しくキスをしてくれた。
「うん、そうだね…」
再び唇を寄せて、今度は深い深いキスをする。
明日は、雑誌のインタビューがあったよな。音楽番組にも出演するんだっけ――。何時からだったかな?
まぁ、いいや。抱き合った後に考えよう。
鷹人、愛してくれてありがとう…。これからも、ずっと一緒に居ような。
おわり。。。
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