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ONE DAY 2
雑誌から目を離し、ストローに口を付けた。この、甘くてほろ苦い感じがたまらない。自然に笑顔になってしまう。
考えてみたら、鷹人と一緒に食事が出来るのは、いつ以来だろう? ライブツアーで全国を回っている今、殆ど鷹人と一緒にいられない。1ヶ月前、ライブが東京近郊だった時に、どうしても会いたくて、 1日だけあった移動日に時間を割いて鷹人に会いに戻ってみた。
ちょうど昼頃だったから、仕事用の前のマンショ ンに行っているんだと思い、そっちに行ってみたら、鷹人ったら、ソファーでぐっすり眠っていて、起こしても、 全然起きなかった。
あの時は、食事どころか、抱き合うことだって出来なかったんだ。
俺の予定を知っていてくれれば、帰ってくるかも知れないと思ったんだろうけど、鷹人はそういう所、無頓着過ぎる!
まぁ、俺も、突然帰って驚 かせようなんて考えないで、連絡をすれば良かったんだけど。
あの時は結局、ほんの少し会話した程度で、一緒に食事もしてないんだから、その前って言うと――? 自分でも良くわからないくらい、鷹人と離れていたような気がする。
俺の仕事はとにかく時間が不規則だ。公務員をやっていた事もあるから、規則的な生活のリズムも知っている。鷹人と暮らすようになってからは、そんな規則的で平和な生活をおくってみたいと思うことすらある。
朝起きると、愛しい人がいつも側に眠っている。俺は、彼が目を覚ますまでの間、じっくり彼の事を観察して、 彼が目を覚ましたらしばらくベタベタ甘えて、それから一緒に朝食を食べて、仕事に出掛ける時にはキスをして・・・。
なんて、結婚生活に憧れている乙女のような事を考えたりもする。
俺は、一回結婚生活を経験しているけれど、仕事が忙しいのは今と同じだったし、それに酷い事に、結局俺は、妻の事を本当に愛することが出来なくて、甘い甘い結婚生活を送ったわけでもなかったのだ。
まぁ・・・鷹人の仕事も、規則正しいとは言えないので、俺が サラリーマンだったとしても、一緒に居る時間は多くはないのかも知れないけど――。
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