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ONE DAY 3

「瞬、お待たせ」  愛しい鷹人の声が頭の上から聞こえてきた。振り向くと鷹人が俺に笑顔を向けていた。 「あれ? 早いじゃない」 「ん、まぁね」  鷹人と一緒にスタバを出て歩き始めた途端、前から来た数人の女の子が、あれ?っていう顔をして俺を見た。その中の1人が別の友達に声をかけると、その一団の視線が一気に俺に集まった。そして、すれ違いざまに「やっ ぱりそうだよ!」っていう、興奮した声が耳に入ってきた。プライベートはなるべくそっとしておいて欲しいとライブとかインタビューで話しているから、声をかけてくることはなかったけれど…。慣れたとは言え、ちょっと複雑な気持ち。  人前で歌う事は嫌いじゃない。だから、この仕事をしている。俺の呼び掛けに応えてくれる、沢山の ファンのにかこまれるライブも、めちゃくちゃ楽しい。 でも、普通に歩いてる時に人に見られたり、何か言われたりするのは、いまだに恥ずかしいと思う。自分でも不思議なんだ。人に見られたい…でも、恥ずかしい。この相反する思いに、時々自分でも戸惑ってしまう。  そんな俺の様子には全然気づいていないようで、鷹人は俺の隣で幸せそうな顔をしていた。 「早く会いたかったよ、瞬」  多分、店の中では言えなかったからだろう、鷹人が俺の肩にポンと手を置いた。 俺は、鷹人の顔を見上げ、もう一度俯いてから返事をする。 「うん、まぁ」  仕事帰りの俺は、周りの目が気になって、思ったことの半分も言えないでいた。こんな事なら、変装用の服を持ってくるべきだったな――そう思いながら、周りの人に聞かれないように小さい声で「俺もだよ」と言って、さり気なく鷹人の腕に触れた。 「なぁ、瞬、何食べる?」  鷹人がとびきりの笑顔で聞いてきた。  「えっと、中華が食いたい。エビチリめいっぱい」  俺がそう答えると、鷹人がポンと胸をたたいた。 「良いよ。俺、この辺に知ってる店があるから。すごく美味しくて、量も多いんだよ」 「決まり、そこに行こう。その前に、ちょっと付き合ってよ」  道を曲がって若い人がほとんど歩いてない所に来たら、急に普通に会話が出来るようになった。俺、ちょっと自信過剰過ぎたんじゃないか?  「あぁ、良いけど、何処に行くの?」 「ちょっと服買いたい。ツアー中にジーパン擦り切れちゃってさ」 「ふーん。それって、オシャレっぽいんじゃないの?」 「え、だって、お尻の所だよ? 恥ずかしいじゃん」 「そっか…」  鷹人が俺を見て、困ったような顔をした。きっと、笑っていいのか迷っているんだろうな。まだ、ちょっとした時に遠慮があるんだから――。  何軒かの店で服を見て回り、気に入ったジーンズとスニーカーを買った。それから夕食を食べに行くことにした。 時間は7時半を回っていた。

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