14 / 108

ONE DAY 9

 それから、英明は自分がどうして俺から離れたのかを話してくれた。 「『男だから抱けない』って言ったのは嘘。瞬を抱きたかった…抱いて、俺のものにしたかった。でもな、親父に言われていたことを思い出したら、抱けなかったんだ」  英明は小さい頃から、親父さんの仕事を継ぐようにと言われて育てられたそうだ。でも、最初から敷かれたレールの上を走る事がどうしても納得がいかなくて、バンドに異常に熱中し始めたらしい。  しばらくすると、真剣にやっている事が親父さんに伝わったらしくて、もしバンドで成功したら、仕事は継がなくても良い、と言ってもらえるまでになったそうだ。だけど、実際の所、あの頃の英明には自信が無かったんだって。がむしゃらに頑張っていたバンドの事よりも、俺に対する気持ちの方が大きくなり始めていて、それが恐かったんだって。 そんな英明の事、親父さんは、お見通しだったようで、ある日、言われたそうだ。 『恋人にばかり気が行ってるようじゃ、プロになるのは無理だろうな』  その頃から、いつも迷いが付きまとっていたらしい。プロを目指し頑張り続けるか、プロになるのはすっぱり諦めて、音楽は趣味でやる程度にするかって。 「俺、お前が眩しかった。2人で居る時、口癖のように、『英明と一緒に有名になって、英明の傍にずっと居る』 って言ってくれて。でも、俺には男のお前との未来を考える勇気は無かった。だけど、お前の事が好きで…」  プロになれなかったら、親父さんの仕事をする――その時には、俺と居られないって事がはっきりわかっている。 色んな事を考えていてたら、親父さんの言っていた、『恋人にばかり気が行ってるようじゃ、プロになるのは無理だろうな』って言葉が頭の中でこだましてしまったんだって。それで『男だから抱けない』って言って、傷つけてでも、俺を遠ざけよと思ったって。 「ばか。英明の小心者」  俺はボソッと呟いていた。 「そうだな。どんなに言われても、何も言い返せないよ」  英明は、あれからずっと俺の事を見ていてくれたのかもしれない。でも、俺たちは友達にも戻れなかったんだ。 あの頃は2人とも幼すぎたのだろう。

ともだちにシェアしよう!