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ONE DAY 10
「な、瞬、彼は優しいのか?」
英明が、あの頃の俺が大好きだった優しい笑顔で尋ねてきた。でも俺は、鷹人の事を思い出して、早く会いたくなった。
「あぁ、すごい優しい。お前と違って、俺が男でも、ずっと傍に居てくれるって言った」
長年のトラウマを拭い去ってくれた鷹人…。
「何だ。やっぱり恋人だったのか」
英明が笑った。
「え…あ…」
自分が鷹人の事を、仕事関係の人だって言った事をすっかり忘れていた。でも、もう良いや。英明との未来は無かったんだ。
「英明、結婚は?」
「仕事継いで、すぐに。子供も居るよ」
「お前が、幸せそうで良かったよ」
英明の辛かった気持ちを、聞いておいて良かったと思った。そうじゃなかったら、俺はずっと英明の事を心のどこかで恨んでいただろう。
「お前こそ。いい奴に出会えて良かったな」
「ああ。とっても幸せだよ」
その後、すぐに健二達が戻って来た。そして、俺と英明が仲直りをした事を、心から喜んでくれた。
健二たちには、俺たちが仲違いした本当の理由は、最後まで言えなかったけど――。
「な、澤井、今度ホントに声かけるから、来てくれよな」
「あぁ、そうだな」
最後に英明と握手をして、その店を出た。俺は、早く鷹人に会いたかった。
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