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俺達が出会うために 1

 仕事が早く終わったから会いたいと瞬から連絡があって、夕食を一緒に食べることになった。で、俺は単純に喜んでいる。  久しぶりに瞬とゆっくり過ごすせると思うと、居ても立っても居られず、終わらせてから行こうと思っていた仕事を後回しにすることにした。  待ち合わせの時間より早く着きそうだから、瞬が時間つぶしてると言っていた店に向かおう。  窓際の席で雑誌を読みながら待っている瞬を見つけ、俺は少しの間その横顔を眺めていた。  やっぱり絵になるよな――。  瞬は、どこに居ても誰もが振り向くような雰囲気を醸し出している。目立つような格好をしているわけでもないし、芸能人オーラを出しまくっているわけでもないんだけど――。 そんな瞬が俺の恋人だなんて、今でも時々、夢だったんじゃない? って思うことがある。  店に入り、そばに行って声を掛けると、瞬はビックリしたように顔を上げてから、大きな目を輝かせ、嬉しそうに微笑んだ。俺はその笑顔を見てホッとする。  瞬は本当に俺の恋人なんだ…。  その時は、幸せ過ぎて、これから言いようのない不安に襲われてしまうことになるなんて、思いもしなかった。  不安の原因は、食事に行った店で、瞬が高校時代の恋人に会ってしまった事なのだ。 ひと目見てわかった。自分に似ている人になんて、今まで出会ったことが無かった――。  その人は、背格好や服の趣味まで似ていた。ただ、俺より年上だから、その分落ち着いた雰囲気だと思われたけれど――。  瞬が気にしていないふりをしているのは、すぐにわかった。瞬の手が微かに震えていた。  そして、食事から帰ると、瞬と抱き合った。瞬は何度も俺を求めてきた。でも、そのことが余計に不安を増長させたのだ。  さっき会った英明って奴の思い出を振り切ろうとしてるんだろうか?  もしかしたら、俺じゃなくて英明に抱かれたいと思っているんじゃないだろうか?  「ごめんね…大丈夫?」  嫉妬心が俺を暴走させた。いつまでも消えない、瞬の英明に対する思い…。瞬は俺を見るたび、無意識に英明を思い出しているんじゃないだろうか?  かりに俺がその不安をぶつけても、「そんな事ない」って、瞬は答えるだろう。でも、英明に会ってしまった今、何を言われても不安が拭いきれないような気がした。 それ程、英明は俺と似てると思う。  不安定な心が、瞬をむちゃくちゃに抱く事で、均等を保とうとしているようだった。 そんな俺の思いは、瞬には届いていないはずだ。幸せそうな顔をして、俺の言葉に答えた。 「大丈夫だよ。すっごい…気持ち良かった。鷹人で、心も身体もいっぱいになったよ。俺、幸せだ」  瞬が両手を伸ばし、俺の顔をグイッと引き寄せてキスをした。 「…良かった。俺も幸せだよ」  幸せ…本当に? 俺、今、嘘をついてる。瞬が見つめているのが、俺では無く、英明の幻のようで、俺は恐かった。 「なぁ、鷹人…明日、休みだから、もっといっぱいセックスしよ」  瞬が無邪気にそう言った。そうだ、英明は瞬を抱かない…抱いてる時、瞬は俺だけのものだ。 「了解。いっぱいね」  そう答えたら、瞬は甘えたように、俺に腕を絡み付けてきた。  ダメだ! 絶対渡さない。英明になんて…。

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