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俺達が出会うために 2

「一言いっておくけど」  俺は我慢しきれなくてそう切り出した。 「何? 鷹人」  瞬が蕩けたような瞳で俺を見つめた。 「俺、瞬のこと2度と離さないけど、それでも良い? 後悔してない?」  ねぇ、瞬…本当に俺を見ているの? 「何それ、当たり前だろ?」  寝ぼけたような顔をしていた瞬が、驚いたように目を見開いた。 「本当に本気?」  俺が聞くと、瞬が一度まばたきをした後、柔らかく微笑んで、俺の頭をポンポンと叩いた。 「本当に本気だよ。じゃ、俺も、一言いっておくよ」 「何?」 「あのさ、もしあの頃、英明と抱き合っていたとしても、俺と英明には明るい未来は無かったと思うんだ。だからさ、俺を信じてよ」  瞬が真剣な目で俺を見つめていた。俺はホッとして瞬の細い身体を抱きしめた。俺の瞬。愛してる、誰よりも。  まだ…ほんの少し不安な気持ちもあるけれど、愛する瞬の言葉を信じよう。 「わかったよ」 「俺、本当に鷹人に会えて良かった」 「俺もだよ」  誰にも見せたくない――。 何で俺だけの瞬じゃないんだろう? どうして『シュン』なんだろう…。  その時の俺は、英明にも、シュンのファンにも、そして、シュンの周りに居る全ての人達にも猛烈に嫉妬していたようだ。  その後、窓の外が明るくなるまで抱き合った。 このまま1つになってしまいたかった。そうしたら、何も恐れる事はないのに…。  瞬の寝顔を見つめていたら、いつの間にか、俺も眠っていた。 気がつくと、時刻は昼を回っている。たっぷり眠ってすっきりしたからだろうか? 心の中のモヤモヤがすっかり晴れたようだった。 「瞬…」  腕の中で眠っている瞬の髪を撫でたら、可愛い声で「んー」と言って、俺に抱きついてきた。 「鷹人?」  俺を見る瞬の瞳が、少し陰っているような気がして、不安が目覚めてしまいそうだった。 「おはよ、瞬」 「おはよう。あー…体が痛い。いくら何でもやり過ぎたかな…。脚の付け根の所がキツイ感じ」 「ゴメンね、瞬。でも、瞬が言ったんだよ、いっぱいやろうって」  おでこにキスをすると、擽ったそうに肩をすぼめた。  大丈夫だよな? 俺の瞬…なんだよな? 「だって、久しぶりだからさ、溜まってたんだよね。右手のお世話になるの、何だか虚しいからさ」 「俺の為に、溜めといてくれた?」 「あはは。そうだよ、お前の為にね」  遅い昼食を食べた後、2人でゴロゴロして過ごした。こんなに長い時間、触れ合っていたのは、初めてのような気がする。映画やお笑い番組を見ながら、ずっと傍に居て、お互い腕や脚を絡めていた。  翌日は、瞬も俺も仕事だった。そして、数日後にはサーベルのツアーの後半がスタートして、再び瞬と会えない日々が始まった。  忙しくしているうちに、英明のことも、だんだん考えなくなっていた。瞬の心の中に、どんな風にあの人が存在しているのかわからないけれど、瞬は、俺の事を愛してくれていると思う。瞬が俺の中に、あの人の姿を捜し求めていたとしても、構わない。俺は、瞬の傍に居たいんだ。

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