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俺達が出会うために 8
「鷹人? どうしたのさ、こんな時間に」
夜中の3時を過ぎているって言うのに、瞬の声が聞きたくて、瞬に電話をかけた。10コールくらいまで待って、出なかったら諦めようと思っていたけれど、すぐに瞬の声が聞こえてきたので、とても幸せな気持ちになった。
「ごめん。疲れている所に電話して」
マンションに戻ってから、酔いを覚まそうとシャワーを浴び、スポーツドリンクを片手に瞬に電話していた。
「明日は、移動日で寝てられるから良いよ」
少し寝ぼけたような甘い声が聞こえて、冷めかけていた身体が熱くなった。
「そっか。良かった」
「何かあったの?」
瞬が少し心配そうに聞いてきた。
「今日さ、吉永さんに会った」
「吉永さん…って…」
一呼吸あってから瞬の声が聞こえた。
「英明さん」
「何だよ、あいつ、鷹人に会って、どうしようってつもりなんだ…」
瞬が早口で、怒ったように呟いた。
「英明に呼び出されたの?」
受話器から不安そうにそうな声が聞こえてきた。
「違うよ。たまたま進藤と行った店に居てさ、色々話した」
「そっか…」
溜息が聞こえてきそうだった。黙ってしまった事が気に掛かる。
「瞬は、俺で良いんだよね?」
黙り込んでしまった瞬に、俺は聞いてみた。こんな心配、今日だけで沢山だ。もう、勘弁して欲しい――。
「何度も聞くなよ。英明、何か言ってたのか?」
不安そうだった声が、少し怒ったような声に変わった。
「別に…瞬とやり直そうとかそんな事は考えてないって言ってた」
「だったら、そんな心配すんなよ」
「うん…。でも、吉永さんホントに俺と似てるから、今でも瞬が、俺の中に吉永さんを見てるのかなって不安になる」
「まったく…俺、今すぐ帰りたくなったよ」
「…」
俺だって、帰って来て欲しい。今すぐ抱きしめたい…。
「帰って、お前の顔、ぶん殴ってやる」
「え? …何でだよ!」
俺の思っていたような答えじゃなくて、少し驚いてしまった。
「俺は今、英明じゃなくて、鷹人のことが好きなんだよ。それで良いだろ? 俺は英明の事なんて、ちっとも考えてないっていうのに、鷹人が勝手に英明のこと気にしてるなんて…何なんだよそれ? もし、そんなんで 俺たちの仲が上手く行かなくなったら許さないぞ!」
瞬の怒った声が受話器から聞こえてきた。
「…ごめん…」
「わかってくれたなら、良いんだよ」
「うん…ホント、ごめん、瞬」
「あのね、ごめんは、もう良いから、愛してるって言ってよ」
「…愛してるよ、瞬」
「俺も愛してるよ、鷹人」
それから、瞬はこう言った。
「あのさ、俺、思うんだけど。あの頃の英明との出会いと別れって、将来、鷹人に出会う為に必要なことだったんだろうな…って」
そうか、そうだったんだ…。そうに違いない!
ずっとモヤモヤしていた心が、すっきり晴れ渡った気がした。
「瞬、明日会いに行っても良い?」
「え? 良いけど、あんまり時間ないよ」
「それでも、会いに行く」
「珍しいなぁ、鷹人。わかったよ、待ってる」
それから、俺は明日の瞬の予定と、いる場所を確認した。
このまま、出かける準備をしよう。朝1番の電車に乗って、愛しい瞬に会いに行くんだ!
おわり。
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