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早く会いたい 1
鷹人が先週から仕事の関係で海外に行っている。俺は昨日までサーベルのツアーで国内外のライブを何十本もやってきた。
そう、俺達はお互い忙しくて、会えない日々を送っていたのだ。しかも、今回は時差の関係で、電話で声を聞けない日が何日もあった。
おまけに、鷹人が行っているのは、彼が以前留学していた街なのだ。積極的な元彼女のいる場所に行っていると思うと、俺は少しだけ不安になる。
まさか、わざわざ会いに行かないだろうと思うけれど、せっかくだから会っておこうって事になるかも知れない…。
彼女は鷹人にぞっこんだったみたいだからな――。あの時、挑戦的な視線を送ってきた、とびきり美人の彼女を思い出してしまい、俺は頭を振った。
鷹人は俺のこと愛してくれている。もし彼女と会ったとしても、何も変わらないさ。
だけど…今回は会えない時間が長かったから、正直言って心も体も辛い。早く鷹人に会いたい、声が聞きたい、抱きしめたい、抱いて欲しい――。
寂しさと欲求不満気味が合わさって、気持ちが不安定だったのか、今回のツアーでは歌いながら涙を流してしまうという失態を何度か演じてしまった。
昔もライブで泣いてしまったことはあるけど、最近は私生活が安定していたので、ライブで涙を流すこともなかったんだ。
でも今回は我慢出来なかった――だって、鷹人の声を聞くことも出来ない日があったんだから!
女の子のようなのは容貌だけじゃなくて中身もだな、ってリュウにからかわれた。
そんなことはないって言いたかったけれど、さすがに今回は、自分でも恋する乙女か? と思う日もあった。
とにかく、鷹人が恋しくてしょうがなかった。
だけど、もうすぐ会えるんだ!
鷹人が帰ってくるのは明後日。鷹人が居ない間にゆっくり休んで体力を回復しておかないと。
とりあえず、長旅の荷物を片付けてからだな――。
昼過ぎ頃、やっと荷物の整理をすませ、洗濯物を干していると、電話の音が聞こえてきた。
鷹人からだと思った俺は、急いで受話器をとり、声を弾ませた。
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