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早く会いたい 2

「もしもし、鷹人?」  だけど、電話の相手は、俺の声を聞くとクスッと笑い声をあげた。 「ごめん。残念だけど渡辺さんじゃないよ」  電話をかけてきたのは、頭が良くて優しくてちょっとイジワルな俺のバンドのリーダー、リュウだった。 「なんだ。リュウか…」  悪いとは思いつつ、ガッカリした声でそう呟いていた。気の知れた仲間だから言えること、許してくれ――。 「『なんだ』な相手で悪かったな」  そう言ってからリュウはプッと吹き出した。 「ゴメン…悪気はないんだって」 「どうなんだかなぁ。ところで、寂しがっているところ悪いんだけど――」  嫌な予感がする。リュウが直接電話をかけてくる時は、何かを急いでいることが多いんだ。 「なに?」 「あのさ、シュンが作る曲、あと3曲だったと思うけど…」 「わ、わかってるって。詞が2コと曲が1コだろ? 大丈夫だって」  メンバー全員が作詞、作曲をやるようになったから、デビュー当時よりは少し楽になってきたよ。 「あ、言っとくけど、自分で歌って泣くような曲作るなよ。まぁ、ファンの子達にはそれはそれで好評だけどな」 「大丈夫だって」 「本当かぁ? あーぁ、あの緊張感のあるシュンはどこに行ったんだろうなぁ」  リュウがそういってもう一度笑った。 「どこにも行ってないって!」 「まぁいいけどね。元気そうだから良いや。あのさ、もう1曲頼むことになるかも知れないから、一応連絡しておいた」 「え? もう1曲?!」 「そう。多分また連絡あると思うけど。よろしくな」 「まじ?」 「マジですよ。シュンが渡辺さんのことばかり考えないようにってね」 「なんだよそれ…」 「あはは。冗談」 「何だよ、ビックリするじゃないか」 「あ、でも、曲作ることは冗談じゃないよ。よろしくな」 「え?!」  俺が驚いた声をあげると、リュウが楽しそうに笑ってから「じゃ、頑張って」と言って電話をきってしまった。 「ちぇ、なんだよ。あーぁ、4曲か…でも今日は無理。疲れた」

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