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愛しい人と 11
「まぁ、じっくり時間をかけて、周りの人達の理解を得るように頑張りなさい。我々は何があっても、君達を応援するからな」
「そうよ。絶対に幸せになるのよ」
鷹人の父親と良子さんが、俺達にそう言ってくれた。嬉しかったし、安心したこともあって、涙が溢れそうだった。
「ありがとうございます」
「ありがとう…父さん、良子さん」
「こちらこそ、『ありがとう』なのよ。私達も幸せになるからね」
鷹人の親父さんと良子さんは、1月になったら入籍する予定でいるとの事だった。今さら結婚式はしないって言っていたけど、良子さんの店で常連さん達とお披露目会をやる予定らしい。
「鷹人、ひとつ聞いておきたい事があるんだ。こんなこと、瞬君が居る場で聞くことじゃないのかも知れないけど――」
親父さんが俺に遠慮しながら聞いてきた。
「何だよ? 父さん」
「もしかして、お前が瞬君と付き合うようになったのは、お前の母親の事が原因になってるのかと思って…」
俺には親父さんの聞きたいことが何となくわかった。
「え…どういう事だよ?」
でも、鷹人はピンと来ていないようだった。
「母さんが出て行った理由は、叔母さん達から聞かされて知ってただろ?」
「ああ…まぁね」
「お前が女性不信になってしまったんじゃないか? って昨日の夜考えたんだが…」
鷹人の母親は、鷹人が赤ん坊の頃に、男を作って出て行ってしまったと聞いた事がある。だから、俺の子供には自分と同じような思いをさせたくないと言ってた。
「違うよ、母さんの事は全然関係無い。女性不信とか女嫌いとか、男が好きとか、そういうんじゃない。好きになったのが、澤井瞬さんだった…それだけだよ」
何度か聞いている言葉だけど、2人でいる時だけじゃなくて、自分の親の前でも同じことを言ってくれた鷹人を、俺はとても頼もしいと思った。
「そうか、それなら良かった。瞬君、鷹人のこと、よろしくな。お互いに支えあって、2人で幸せになるんだよ」
その後、お互いに2人きりの時間を楽しもうって親父さんが言ってくれて、店を出たところ
で親父さん達とわかれた。
親父さん達は、この後、良子さんの息子さん達にお土産を買ってから、神戸に帰ると言っていた。
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