44 / 108

愛しい人と 11

「まぁ、じっくり時間をかけて、周りの人達の理解を得るように頑張りなさい。我々は何があっても、君達を応援するからな」 「そうよ。絶対に幸せになるのよ」  鷹人の父親と良子さんが、俺達にそう言ってくれた。嬉しかったし、安心したこともあって、涙が溢れそうだった。 「ありがとうございます」 「ありがとう…父さん、良子さん」 「こちらこそ、『ありがとう』なのよ。私達も幸せになるからね」  鷹人の親父さんと良子さんは、1月になったら入籍する予定でいるとの事だった。今さら結婚式はしないって言っていたけど、良子さんの店で常連さん達とお披露目会をやる予定らしい。 「鷹人、ひとつ聞いておきたい事があるんだ。こんなこと、瞬君が居る場で聞くことじゃないのかも知れないけど――」  親父さんが俺に遠慮しながら聞いてきた。 「何だよ? 父さん」 「もしかして、お前が瞬君と付き合うようになったのは、お前の母親の事が原因になってるのかと思って…」  俺には親父さんの聞きたいことが何となくわかった。 「え…どういう事だよ?」  でも、鷹人はピンと来ていないようだった。 「母さんが出て行った理由は、叔母さん達から聞かされて知ってただろ?」 「ああ…まぁね」 「お前が女性不信になってしまったんじゃないか? って昨日の夜考えたんだが…」  鷹人の母親は、鷹人が赤ん坊の頃に、男を作って出て行ってしまったと聞いた事がある。だから、俺の子供には自分と同じような思いをさせたくないと言ってた。 「違うよ、母さんの事は全然関係無い。女性不信とか女嫌いとか、男が好きとか、そういうんじゃない。好きになったのが、澤井瞬さんだった…それだけだよ」  何度か聞いている言葉だけど、2人でいる時だけじゃなくて、自分の親の前でも同じことを言ってくれた鷹人を、俺はとても頼もしいと思った。 「そうか、それなら良かった。瞬君、鷹人のこと、よろしくな。お互いに支えあって、2人で幸せになるんだよ」  その後、お互いに2人きりの時間を楽しもうって親父さんが言ってくれて、店を出たところ で親父さん達とわかれた。  親父さん達は、この後、良子さんの息子さん達にお土産を買ってから、神戸に帰ると言っていた。

ともだちにシェアしよう!