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愛しい人と 14

 食後しばらくしてから2人で片付けをして、その後風呂に入った。もちろん2人で。 やっと鷹人に触れられると思うと、やけにドキドキした。12月に入ってから、何かと忙しかったから、1回も抱き合って無かった。鷹人の裸を見ただけで、体の奥のほうが疼くような感じだ…。 「なぁ、鷹人…」 「何? 瞬」 「さっさと洗って出ようぜ」 「ん…? そうだね、でも、よーく洗おうよ。一年分の汚れを落とさなきゃ」   何だよ、その返事。……まったく! 鷹人、俺の気持ちをわかってて、わざと言ってるのか? 「なぁ、鷹人。お前、1年間ずっと風呂入らなかった訳じゃないだろ?」  俺はついムキになって言い返してしまった。俺が不機嫌丸出しで言ったのに、鷹人は笑いながら、俺の頬を指で突ついた。 「わかってるってば。瞬はホントに可愛いんだから」  鷹人が俺の頭をグリグリと撫でた。 「煩いな、年上をからかうなよ……」  鷹人は時々俺を子供扱いする。そんな鷹人に、俺はムキになって言い返したりするけど、本当はこんな感じがかなり心地良いのだ。鷹人の前だと自分が出せる、我が儘も言える、拗ねてみたり出来る…。 「まったく…今時の若いもんは…」  だけど今日は素直になれなくて、ブツブツと年寄りのような事を言いながら、体を洗い始めた。 「からかってるんじゃないよ、本当に可愛いって」 「もう、そんなのどうでも良いから、早く体洗えよ」 「はいはい。ねえ、瞬、背中洗ってあげるよ…」 「え…」 「ほら、早く後ろ向いて」 「あ…うん…頼むよ」  背中を洗っていた手が、俺の体を抱きしめてきた。首筋に唇が近寄ってきて息がかかる…体がどんどん熱くなる。 「ん…」  唇が俺の耳朶に軽く触れた後、熱い舌が俺の耳の後ろから首筋のあたりを動き回った。 「あっ…タカト、ま、待てよ」  俺がそう言ったら、鷹人はすぐに手を離した。だけど、「ヤバイ、すぐやりたい」って言って、俺の体をもう一度抱きしめようとした。  でも、俺はそれを遮って、シャワーを浴びた。今度は俺が焦らす番だよ。 「だから、さっさと洗おうって言ったじゃないか。お前、まだ一年分の汚れ、落としてないだろ! 俺は、頭洗って先に出るから」 「ひどいなぁ…」  こんな会話も実はすごく楽しい。だから、「拗ねてごめん」って意味を込めて鷹人に抱きつきキスをした。心も体もポカポカ温かい――。鷹人がそばに居てくれるからだよ、本当にありがとう。  俺は先に風呂を出て体を拭き、裸のままベッドに潜り込んで、リモコンでテレビをつけた。テレビでは年末恒例の歌番組が賑やかに進行していた。  俺達のバンドにも出演依頼が来るんだけど、大晦日には仕事しない主義なので、出演したことがない。そう言えば、カウントダウンライブも考えた事が無かったな。  大晦日と正月三が日くらい、普通の生活したいし、ゆっくり過ごしたいんだよ――。  ベッドの中でまったりしながら、テレビから聞こえてくるラブソングを聴いているうちに、俺は鷹人との様々な出来事を思い出していた。  初めて会ったのは、打ち上げの後、仲間と一緒にカラオケBOXに行った時だった。 前の店でビールを飲み過ぎた俺は、1曲歌い終わった後、部屋を出てまわり部屋から微かに聞こえてくる様々な歌声を聞きながら、トイレに向っていた。そして、トイレの近くまで行った時、廊下の少し先の方で店の制服を着た人物が、何かにつまづいて転んでいた。その人物が、鷹人だったのだ。

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