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愛しい人と 15

 俺は初めて見た時から、鷹人の事が気になっていた。 話をしたくて、カラオケBOXの廊下や部屋に飾られている絵の作者を聞いてみた。すると、その絵は、偶然にも鷹人が描いたものだった。それを知った途端、俺は鷹人の描いた絵が欲しくなった。  鷹人が気になったのは、昔大好きで付き合っていた親友の英明に似ていたからだ。英明は俺のことを「愛してる」って言ってくれたけれど、結局、男は抱けないって俺の前から去ってしまった。 英明に拒絶されてから、俺は人を愛する事も、誰かに愛される事も、恐くなってしまった。  いつか拒絶されてしまうのではという思いが付き纏っていた。妻.ミサの献身的な愛でさえ、結局は受け入れる事が出来なかった。  俺を好きだと言ってくれた鷹人の存在は、英明との悲しい過去を消してくれるような気がした。過去に囚われている自分を開放すれば、ミサを愛せるかもしれない、そんな勝手な事を考えていた。でも、結局、ミサとの関係は、歯車がずれたままだった…。  俺は初めて恋をした中学生のように、鷹人にのめり込んでいった…。優しくて、暖かくて、真っ直ぐな鷹人を本気で愛してしまった。鷹人を苦しめている事に、気付きながら、離れることを考えられなかった。  鷹人が俺の前から居なくなってからは、俺の事を考えてくれた鷹人の気持ちに報いようと思い、何をするにも家庭のことを一番に考えるようにした。子供は本当に可愛かった。子供の為なら、幸せな夫婦を演じつづけられるだろうって思っていた。  だけど、子供が俺の子でないとわかってから、妻も俺もお互いにどう接していいのかわからなくなってしまった。ずっとお互いにウソをつき続けていたから…。  子供の父親は、妻が仕事で殆ど家に帰らない俺の代わりに頼りにしていた妻の幼馴染だった。 妻が俺に離婚を言い出した後、その彼が挨拶に来て「ミサは俺が幸せにする」って宣言された。正直言ってホッとした。ミサと子供が幸せになれるなら、それでいいんだと思った。  その頃の俺は、鷹人以外はもう愛せないと思っていた。たとえ、鷹人と結ばれなくても…。  過去の事を思い出し少し切なくなっているうちに、俺はウトウトし始めていた。

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