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愛しい人と 17

「すっごい良かったよ、鷹人」  鷹人とひとつになったまま、俺は鷹人の唇に軽くキスをした。 「すっきりした?」 「まぁね。一ヵ月ぶりだったから」 「一ヵ月半だって…。俺、辛かったよ…」 「あはは…俺もだよ」  顔を見合わせて笑った。笑うと少しあそこに響くようで、鷹人のがピクって反応するのがわかった。 「なぁ、繋がったまま年越そうよ」  ベッドの脇の時計を見ると、もうすぐ新しい年になる所だった。 「良いよ。瞬の中気持ち良いし」 「あ、そうだ、テレビ付けてみよう」  枕の脇に転がっていたリモコンで、テレビをつけ、抱き合ったまま、テレビを見ていた。 しばらくするとカウントダウンが始まった。新年か…たった1日違うだけで、ずいぶん変わるような錯覚に陥ってしまうな――。 『新年明けましておめでとうございます』  テレビからその声が聞えた途端、鷹人が動き出した。 「あ、ちょっと?!」 「今年もよろしく、瞬」 「…あぁ…よろし…く…っ」  それから、数回抱き合って、目が覚めたのは、元旦の昼過ぎだった。 デパートで買ってきた小さなおせちセットで正月気分を味わい、夕方になってから、初詣に出かける事にした。 「あのさ、この間サチが服を選んでくれたらしいんだけど…」  そういえば、この間サチが「渡辺さんと出かける時に着なよ」って言って、服が入ってる袋を渡してくれたんだった。色々あったから、中身を見るの忘れてた。  袋の中には、絶対俺だってバレなさそうな、若者っぽい服が入っていた。って…こういう服、俺が着るなんて、誰も思わないよなぁ…。それから、よく見てみると、もう一着入っていた。 「あれ…これは、どうも鷹人の分みたいだよ」  少し色合いが違うけど、おそろいっぽい服が入っていた。 「な、これ着ていこうぜ」  俺がそう言ったら、鷹人がちょっと困ったような顔をした。 「本気?」  俺が渡した服を両手で持って首を傾げながら鷹人が言った。 「うん、本気。こういう服ならさ、俺、男か女かわからないだろ?」  ニカッと笑いながらそう言ったら、鷹人が真面目な顔で俺を見た。 「…こういう服じゃなくても…あ、痛て…」  俺は鷹人の両頬を指でギュッとつまんだ。 「まったく! 失礼だなぁ」  そう文句言ったけど、俺は思わず笑ってしまった。そうだよなぁ…初めてあった時、鷹人は俺の事、女だって思ったんだっけ。 「さぁ、早く着替えてよ」  鷹人を急かし、2人で今時の若者に変身する。何だか、気持ちも若返ったような気がするよ。

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