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LONG WAY HOME 1

 サーベルの長い全国ツアーが終わって、瞬が今日の夜、帰ってくる。 予定では、明日の午前中に帰るって話だったけど、昼過ぎに来た瞬からのメールで、今日の夜には瞬に会えることが分かった。  これから一週間、瞬は仕事が休みだ。俺は休みというわけではないけれど、ツアー中のように長い間会えないわけじゃないから、瞬が帰ってくるのが楽しみでしょうがない。  ホントに長かった。瞬が俺だけのものではない、『シュン』でいる時間・・・。  久しぶりに俺は、このマンションに帰って来た。そして、もうすぐ瞬が帰って来る。つけっぱなしのテレビは、さっきから放ったまま、落ち着かない気持ちで瞬の帰りを待ちわびていた。  その時突然、仕事用に使っている電話が鳴り出した。 私用の電話なら、居留守を使う所だけど、仕事ではそうもいかない・・・。まったく、こんな時に いったい誰なんだ? そう思いながら、ソファーの横のテーブルに置いてある、電話の子機を手にとった。 「はい渡辺です」 「よう、鷹人」  電話の向こうから、進藤の声が聞こえてきた。こいつのタイミングの悪さは天下一品だ。 まるで、狙っていたかのような電話にガックリ来てしまう。 「何だよ・・・何か用?」  思わず不貞腐れたような声が出てしまった。相手が進藤だと思うと、気が緩んでしまう。 「はぁ? 用があるから、電話したんだろが。お前、明日の予定、三宅さんから聞いて無いだろう?」  今日、進藤の事務所に寄った時に、三宅さんから「後で、明日の打ち合わせの件で話があるから、帰るときに寄って下さい」と言われていた事を思い出した。 そうだ、俺とした事が――。あの時確か、瞬からのメールを見た直後だったので、すっかり舞い上がっていたんだ。 「ごめん、忘れてた」  それからしばらくの間、俺は嫌味を言われ続けた。嫌味の後、進藤はやっと本来の用件を話し始めた。

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