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LONG WAY HOME 2
「ただいま、鷹人! 今帰ったよ」
進藤に明日の予定を聞いている途中、玄関から瞬の嬉しそうな声が聞こえて来た。
「お帰り・・・」
進藤の電話をすぐ切るわけにもいかず、俺はとりあえず返事だけをした。
「鷹人ったら!」
不貞腐れたような声と足音が聞こえ、部屋のドアがバタンと開くと、荷物をその場で放り出した瞬が、俺のそばに駆け寄って来た。
それから、ソファーに座っている俺の前に立つと、屈み込んで、俺の顔を両手でふわっと包み込んだ。
「ただいま」
瞬は俺が電話していることには全然構わず、顔を近づけてきた。
「ちょっ・・・・」
抵抗する間もなく、柔らかい瞬の唇が、俺の唇を塞いだ。
「鷹人ー、瞬さん帰ってきたのか?」
「んっ・・・」
瞬が唇を離してくれなかったので、俺は変な声を出してしまった。
「まったく、イチャついてないで、仕事の話をちゃんと済ませろよ」
電話の向こうから、進藤のからかうような声が聞こえて来た。
「んん・・・」
顔を離して喋ろうとしたけど、わざとのように瞬が唇に吸い付いてきた。俺は、慌てて瞬の身体をグイッと離した。
「悪い。えっと、明日は9時に、この間の下絵を持って、事務所に行くから。その後、打ち合わせに顔を出せば良いんだろ? それから・・・」
瞬は俺の目を見て、少し剥れたような顔をしてから、俺の横にドサッと座った。
俺はとにかく、仕事の話を終わらせようと思い、さっき書き込んだメモを見ながら、進藤に、明日の予定の確認を続けた。
「それでオッケー。忘れるなよ」
「了解。じゃ、明日な」
俺は横に座っている瞬に手を伸ばしながら、急いで電話を切ろうとした。
「おい、ちょっと待てよ。なぁ、瞬さんと代わって」
「はぁ? 何でだよ・・・」
「あーあ、そんな態度で良いのかなぁ? お前らが上手く行くように、俺がどれだけ苦労をしたと・・・」
あぁ、ダメだ。またいつもの、進藤の恩着せがましい話が始まってしまう。
「分かった。今、代わるから」
さっさと話を済ませたかったのに、進藤はホントに余計な事ばかりするんだから・・・。
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