「鷹人、そろそろ一緒に暮らさない？」 　正月休みの最後の日に、瞬が俺にそう言ってくれた。俺も、いずれ瞬と一緒に住めたら良いなと漠然と考えていたので、純粋に嬉しかった。 「そうだね。瞬にそう言ってもらえるの、すごく嬉しいよ」 「ずっと一緒に居られるって考えると、ワクワクするよ、俺」 　瞬が目をキラキラ輝かせながらそう言った。 　引っ越すとなると、仕事の道具や親父が持って行かなかった荷物、昔描いた大量の絵、その他ごちゃごちゃしたもの全部整理しなくちゃならない。だけど今、まとまった時間がとれないし――俺はそんな風に考えてしまい「でも、まぁ、もう少し仕事が落ち着いてからが良いかもよ」って、先延ばししたいようなことを言ってしまった。 「まぁ……そうだよなぁ」 　その時、瞬が少し表情を曇らせたのがわかったけれど、すぐに別の話を始めたから、瞬も俺と同じように、もう少し先にしようと思ってくれたんだと俺は自分に都合よく考えていた。 　瞬の正月休みが終わってからしばらくすると、瞬も俺も本当に仕事が忙しくなって、２人でいる時間が殆ど取れなくなってしまった。 　今までも忙しいくて会えない時は、LINEなどで連絡を取り合ったり、電話で話したりしていたので、俺は特に問題なく過ごせていると思っていた。だけど、瞬は不満を募らせていたようなのだ――。 　それから数週間後、瞬の仕事がひと段落したようで、その夜、俺たちは久しぶりに電話でゆっくり会話する時間が持てた。 瞬が嬉しそうに色々な出来事を話してくれたので、俺は瞬の話を相槌を打ちながら聞いていた。俺は瞬の話を聞くのが楽しかったし、やっとゆっくり話が出来たので、嬉しいと思っていたのだけど――。 「なぁ、鷹人は俺の話聞いてるだけで楽しいのか？」 　ちゃんと相槌も打っていたし、色々質問もしたじゃないか――。 「え、楽しいし、久しぶりに瞬の声が聞けたから嬉しいんだけど……」 　そう言った俺に、瞬は微妙に不機嫌そうな声で答えた。 「ふーん……。俺も鷹人の話が聞きたいのに、俺ばっか話してない？」 「……俺、瞬みたいに色んな所に行くわけでもないから、話っていってもなぁ」 「なぁ、鷹人……」 　瞬がそう言ったきり、しばらく何も言わなかった。 「瞬、どうしたの？」 「俺、寂しいよ……俺たち両想いになれたのに……一緒に居られないなんて悲し過ぎる」 「え……」