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はっぴーでいず 5

「おっと……」  立ち上がろうとした意志に反して、俺はカクッと腰砕けになってしまった。それを見ていた瞬が、慌てて俺を支えようとしてくれたけど……。 「わっ、重た……」  小柄な瞬にとって脱力した俺は重すぎだったようで、俺たちは2人で床に座り込んでしまった。 「ご、ごめん」  ホント、情けない姿を見せてしまった……。俺は気合を入れて立ち上がり、もう一度ベッドに腰かけた。 「大丈夫? 鷹人」  心配そうに見つめている瞬に、俺は頑張って笑顔を向けた。 「大丈夫だよ。ちょっと足をひねったみたいでさ」  俺は瞬よりかなり若いんだから、やり過ぎて腰が痛い……なんてカッコ悪いこと言いたく無かった。 それに……もし正直に話したら、瞬は俺のことを心配して、色々と世話をやこうとするから、言うわけにいかなかった。  一緒に生活するようになって一週間くらいたったころ、今の状況と同じような事があった。あの時は、俺が平気だって言ってるのに、出かける時間を過ぎても瞬が俺の腰を揉んでくれてて……、予定の時間に来ない瞬を心配して、 マネージャーの伊東さんが家まで迎えに来てしまったんだ――。  あの日、伊東さんがぼやいてた「緊張感のあるシュンを返して下さい」って。  だから、瞬が俺と一緒になった事で、仕事に支障が出てしまっては、俺としても困る。俺は瞬が真剣に仕事に取り組んでいる姿を見るのが大好きだから。 「良かった。腰が痛いのかと思って、ちょっと心配したよ。今日のライブ、ハコだし」  瞬がサラッとそう言った。だけど――。 「え、ハコって?」 「大きな会場じゃなくて、ライブハウスでやるんだよ。鷹人、会場の名前とか見てないの?」  俺は相変わらずこういう事に疎過ぎるんだと思う。家から一番近いと思われるところで行われるライブに行こうと思うから、場所は気にするけれど、どんな会場なのかは全然知らないし……、後は、出かける前にもう一度ネットで場所を調べてから行けば良いやって――。 「場所は一応見たけどさ……」 「なぁ、鷹人ぉ、興味なさすぎじゃない? 大事な俺のライブだって言うのに」  瞬は冗談ぽく言ってるけど、またやっちゃった感がある俺は、謝るしかなかった。 「ごめん……行く前にちゃんと調べようと思ってたんだよ」  俺はベッドに腰かけたまま、両手を腿の上に置いて頭を下げた。 「もっと関心持ってくれると嬉しいんだけどなぁ」  瞬はクスクス笑いながら俺の肩をポンポンと叩いた。 「だって、俺は、サーベルのシュンじゃなくて、 『澤井瞬』に関心があるんだもの……」  頭を上げ、瞬の目を見つめながらそう言った。それから俺は、腰痛がばれないように立ち上がり、瞬の体をギュッと抱きしめた。 「まぁ、そうだったね。うん……わかってるよ。どれもこれも鷹人らしさなんだって」  瞬がちょっと照れたような顔をしながら、俺を見上げた。あぁ、いつみても「俺の瞬」は本当に可愛い。  うーん『俺の瞬』か――。

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