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はっぴーでいず 10

 しばらく激しい曲が続いたので、周りの熱気で俺も汗をかき始めていた。さすがに皆と同じように、踊る事は出来なかったけど、気が付くと右腕を高く振り上げたりしていて、俺もすっかり場の雰囲気にのまれていた。  そして、次の曲に行く前にステージ左側にライトがあたり、リュウが話し始めた。リュウがファンに語りかけている間、シュンはドラムセットの近くに行って汗を拭きながらナツに何か声をかけていた。サチは水を飲みながら俺の方をチラッと見た後、ペットボトルを片手に持ったままシュンのそばに行き、何か話しているようだった。 すぐにシュンが俺のいる方を見た。そして、シュンは俺を見つけると満面の笑みを浮かべた。俺は照れくさくて、表情を崩さないように気を付けながら、シュンに向かって軽く頭を下げた。  リュウの話が一段落したのを見計らって、サチがシュンの左手を掴んで、手首についている、リストバンドのような物を指差した。 「ねぇ、これってオシャレだと思う?」  サチの急な問いかけにファンの皆は嬉しそうに「思うー」「かわいいー」などと答えていた。 「じゃあ、俺も真似しようかなー? あ、でも、これさぁ、ヘアバンドじゃないの? シュン」  サチがそう続けた。  おや……良く見えないけど、もしかしてシュンがしてるあれ、俺の? そう思いながらステージを見ていると、シュンが「うるさいなー」と言ってサチの背中を叩いていた。 「オシャレに見えるんだから、別に良いじゃん」  シュンがそう言ったら、サチがニヤニヤしながら「ふーん。まぁ、良いけどさぁ」と続けた。  2人のやり取りを聞いて、ファンの子たちが笑ったり「可愛い~」って声をかけたりして和やかな空気が漂っていた。  うつむき加減で照れているシュンに、メンバー全員が笑いながら「春だねぇ」「ほんとだねー」と声をかけていた。  瞬ったら、いつの間に俺の所からヘアバンドを持っていったんだろう?    トークがひと段落すると、次の曲が始まって、会場は一層の盛り上がりを見せた。   そして、何曲ぐらいやっただろう? ずっと立ちっぱなしだった俺は、静かな曲が2曲ほど続いたあたりで、すでにかなり疲労がたまっている感じだった。 後30分程度ってところだろうか?――そう思いながら時計を見ていると、突然、シュンの声が聞こえてきた。

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