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はっぴーでいず 11
「えーと、何話そうかな? あ、そうだ、1つ伝えておきたかった事があったんだ」
シュンがそう言うと、会場からは「何?」「どういう話?」って声が聞こえた。
「えーとですね、今、皆にはそれぞれ大切だと思う相手がいると思います。で、俺にもね、大切な人がたくさんいるわけです。こうやって一緒にやってるメンバーとか、スタッフの皆とか、俺を生んでくれた両親とか、それから、俺の事を愛してくれてる人とか――」
シュンがそこまで言うと、あちこちから「シュン、愛してる!」って声がとんだ。
たくさんの人達に愛されて、シュンはホントに幸せな人だ。でもこの瞬間は、俺だけの瞬じゃないんだな……そう思うと、少し複雑な気持ちになるのだ。
「で、ね、色々あったけれど、俺は大切な人と出会えて、ホントに良かったって思っています。メチャメチャ愛してる! これからもずっとよろしく」
ファンの皆の拍手と「よろしくー」「愛してるよー」って叫ぶ声が響いていた。
そんな中、瞬がパッと俺の方を向いた。視線がぶつかり、胸がドキドキした。慌てて俺も「愛してるよ」 って唇を動かしたら、通じたのかどうか分からなかったけど、瞬が幸せそうな顔をしてくれた。
「はいはい。俺達もしっかり愛してるから、次の曲に行こうぜ」
ドラムのナツが冗談っぽくそう言うと、サチもリュウも笑いながら「そうそう」って答えた。
シュンが嬉しそうに笑いながら「おう! 行くぜー!」って叫ぶと、会場全体に「イエー」というファンの声が響き渡った。
次の曲以降もすごく盛り上がって、気付くと俺は恥ずかしいのも腰が痛いのも忘れて踊っていた。 脚に力が入らなくて、時々よろけてまわりの人にぶつかってしまったけど……みんなお互い様みたいな感じだから、まぁ良いか――。
楽しい雰囲気のうちにライブが終わった。終わってみるとあっという間だったように思えた。
久しぶりのライブは、ちょっと疲れたけれど、気持ち良く汗をかけたし、運動した後みたいに、とてもすっきりした気分だ。
混み混みのロッカーで荷物を取った後、俺は人の波に流されながら出口に向かった。
外に出ると扉の横にマネージャーの伊東さんが居るのがわかったので、軽く会釈をして通り過ぎようとした。すると、伊東さんはさりげなく俺の腕を叩いて、一緒に来るように促した。
伊東さんの後について行くと、関係者専用口から再び建物の中に入ることになった――。
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