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はっぴーでいず 13
「瞬、俺、そろそろ帰るよ。まだ何かやるんでしょ?」
着替えを再開した瞬にそう言って、俺はソファーから立ち上がった。
「ダメだよ鷹人、一緒に車で帰ろう。腰痛いんだろ?」
瞬がシャツのボタンをとめながら言った。
「え……わかってた?」
「あたりまえだよ。鷹人がフラフラしてんのが見えて、気が気じゃなかったよ」
「見てたんだ……」
「そりゃそうだよ。俺の愛しい人だからね」
周りも気にせず大きな声でそう言った瞬の背中を、通り過ぎるスタッフが順番にポンポン叩いていた。
「シュンさん、幸せそうですねー?」
「あぁ、とっても幸せ」
笑顔全開の瞬のそばに、マネージャーの伊東さんが近寄ってきた。
「あのー、幸せそうな所悪いんですけど、シュン、明後日から本当の本番だから、気を引き締めて下さいよ。地方に行ったら、思うように家に帰れないんですからね。『渡辺さんに会いたいから連れて帰ってよ』……とかいう我儘は聞きませんからね、覚悟しておいてください。それから――」
伊東さんが瞬の隣で色々小言をいってる姿を、他のメンバーもスタッフも、皆ニヤニヤしながら眺めていた。俺は堪らず、瞬の代わりに頭を下げてしまった。
「すみません……」
「あ、いえ、ホントに気にしないで下さい。瞬ったら、他の皆には良い顔して見せるのに、私には我儘放題なんですよ……。まったく、子どもみたいで……」
伊東さんがそう話していると、横から瞬が割って入ってきた。
「愛されてるって思わない? そういうの」
そう言って瞬が笑うと、伊東さんは「思いません! 全然」と答えた。
伊東さんには悪いけど、2人の掛け合いが可笑しくて、俺は後ろを向いて笑ってしまった。
その後、ミーティングが終わるまで、俺は部屋の端にあるソファーで待つことにした。
体力的にも精神的にも疲れていた俺は、待っている間ずっと眠っていたみたいだ。瞬に声をかけられた時、メチャメチャ寝ぼけた声で返事をして大笑いされてしまった。
そして、瞬と俺その場にいたみなさんの拍手に送られ楽屋を出て、伊東さんの運転する車で家に帰った――。俺は恥ずかしかったけど、瞬の嬉しそうな顔を見ると、たまにはこんなこともあって良いのかもと思えた。
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