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はっぴーでいず 14
玄関を閉めて居間に行くと、すぐに瞬が抱きついてきた。
「なぁ鷹人、聞くの忘れたけど、ライブ、どうだった?」
「あぁ、相変わらず、カッコ良かったよ。歌もバッチリだったし」
「そっか、良かった。ありがとう」
瞬が俺を見つめ、唇にキスをした。
「あ、ところでさ、いつの間に俺のヘアバンド持っていったの?」
何度目かのキスの後、俺は急に思い出して聞いてみた。
「あ、鷹人のだってわかった?」
「わかったよ。今日使おうと思ったら無かったし、サチさんが変にからかってたし」
「いやー、ゴメンな。それがさ、おととい洗濯物カゴに入ってたの見つけてね。鷹人の香りがしたから、お守りにしよう! って思って。でも俺、ヘアバンド使う感じじゃないからさ、腕にしてたってわけ」
洗濯物に紛れていたのか……どうりで向こうのマンションに無かったわけだ。それにしても、俺の使っているものをお守りにしたいなんて、瞬の意外な一面を見た感じがする。
「でも……言っといてくれると助かるなぁ。向こうで探しちゃったよ」
「あ、ごめん、ごめん」
瞬が背伸びしながら俺の頭をクルクルと撫でた。いつもと逆なので、なんだかくすぐったい気分だった。
「まぁ、いいんだけどさ。なんか、ちょっと意外だなって思ったよ」
「そう? もしかしたら俺、匂いフェチだったのかも。あ、鷹人限定だけどね。安心するんだよ、鷹人がそばにいるみたいで」
「ふーん、そうなんだ」
照れくさくて瞬の言葉を軽く流してしまったけれど、本当は嬉しかったし、ドキドキしてしまった。
「あ、そうだ。ツアー用に鷹人のもの何か貸してくれる?」
「え? ツアー用って……」
「ツアーの時のお守りさ。そうだなぁ、Tシャツが良いかな」
「良いけど……ライブには着られないでしょ?」
「ライブの時は着ないよ。パジャマとかホテルで部屋着にする」
「わかったよ、後でちょっと見てみるよ。ところで、トランクスとか靴下っていうのはどう?」
俺、瞬がどう答えるのか興味があって、そう聞いてみた。靴下の匂い嗅いでる瞬なんて、想像したくないよな――。
「え? 何言ってるんだよ鷹人。変な奴だなぁ」
反応が気になって聞いてみたものの、意外と普通な反応が返ってきた。
「変って、瞬の方が……」
変わってない? と言おうかと思ったけど、まぁ、人それぞれだからな――。
「大体ね、鷹人の香りは好きだけど、靴下って事はないだろ。それにトランクスなんか……」
そこまで言って、瞬が眉間にしわを寄せた。
「何さ? 瞬」
「それって、ちょっと変態チックじゃない?」
「そうか」
「そうだよ」
ボーダーラインはどこなんだろう? まぁ、上半身はOKって感じなのかな……と考えて思わず笑ってしまった。
「なに笑ってるんだよ、鷹人? なぁ、それより早く風呂入ろうぜ。俺、今日もやりたいし」
「え、でも俺もう――」
疲れてるし、腰が痛いから無理だよと言いたかったけど……。
「今日は俺が上で動いてあげるから。俺、明日は休みだし、これからツアーで地方に行ったら、なかなか出来ないんだからね!」
「そうだけど……」
まあ、ツアーじゃなくても、時間が合わないことが多いから、出来る時に……って気持ちはわかるけど――。
「ほら! こっちは、ちゃんと言ってるじゃないか、やる気満々だって」
そりゃ、そんなことされたら、やる気になるって――瞬の右手が絶妙なタッチで俺の股間を撫ぜていた。ライブの後だって言うのに、瞬の体力はすごいよなぁ。
俺の可愛い天使は、時々悪魔になる。でも、俺はその可愛い悪魔も大好きなんだ。
「さ、風呂入ろうぜ、鷹人」
「あぁ、そうだね」
それから俺たちは一緒に風呂に入って、その後甘い時間を過ごすことになるのだった。
きっと明日、瞬は寝て過ごすんだろうな――ま、それでも良いか。
神様、どうかこの幸せが、いつまでも続きますように……。
おわり
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