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夏休み 1
「準備出来た?」
ベッドの上でボーっとしている俺に向かって、鷹人がそう言っているのがわかった。
あぁ、わかっているよ、今日は8月の3週目の月曜の朝。待ちに待ったオフの初日だ。
「ゴメン、ゴメン……」
時計を見ると、目覚ましに起こされてから30分以上経っていることがわかった。ベッドの横では、鷹人は困ったような顔をしながら俺を見つめている。
「今すぐやるから――」
俺は眠い目をこすりながら、慌てて旅行用のバッグを引き寄せ、俺の前に並べられていた荷物を詰め込み始めた。
「あ、ありがとな、鷹人」
俺がベッドで寝ぼけている間に、鷹人が着替えなどを揃えておいてくれたようだ。
「無理に行かなくても良いのに。ライブツアー終わったばかりで疲れてるだろ?」
おととい、サーベルの全国ツアーが無事に終了したばかりだったのに、昨日の夕方には、来月発売されるアルバムについてのインタビューや写真撮影があって……。
確かに疲れてはいる、だけど、この機会を逃したら、次はいつ時間がとれるかわからないから――。
「良いんだよ。一度は顔を出そうと思っていたし、声をかけてもらえたんだから、ちょうど良い機会なんだって」
俺は今日から4日間、久々のオフだ。そう、待ちわびていた休日なのだ……。
俺はサーベルのライブツアーで5月から全国を回っていたし、鷹人は鷹人で仕事が忙しかったから、2人でゆっくりする時間が殆どなかった。だから、本当はオフの間ずっと、鷹人のそばに居て、出来ればイチャイチャしたりして過ごしたかった……。
「でも俺、瞬と2人だけで過ごしたかったんだけどなぁ」
鷹人がそう言って、荷物を玄関に運ぼうとしていた俺の頬を両手で包み込んだ。
お前の気持ちも良くわかっているよ。疲れいている俺に無理させたくないって思っているんだよね。
「明日の夜には帰ってこれるんだから、帰ってから2人でゆっくり過ごせば良いじゃないか」
至近距離でジッと見つめながら俺が言うと、鷹人が困ったような笑顔を向けた。
「うん……そうだね」
鷹人はそう言ってから、少し拗ねたような顔しながら「俺のために、ありがとう」と呟いた。
「自分のためでもあるんだから、気にするなよ」
俺は持っていた荷物を床に置いて、鷹人の腰に腕を巻きつけた。それから鷹人の目をジッと見つめ、熱い熱いキスをしかけた。
俺も会いたかったけど、鷹人も俺がずっと家をあけていたから、寂しかったに違いない。
いつもありがとう鷹人。お前が待っていてくれると思うと、俺はどんなハードなスケジュールだってこなせるんだよ――。
久しぶりの深いキスに、俺の身体は熱く火照りだした。
「一回だけしてから行く?」
唇を離した後、鷹人が遠慮がちに聞いてきた。まずかったかな……とは思ったものの、自分でも止められなかったんだ。
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